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71話~80話

第71話 仇にめぐり合いたい

「酒ぎらい女ぎらいのあんた、よく女郎買いは行くじゃありませんか」
「わかってるじゃないか、人間誰しも」
「わからんじゃありませんか、きらいなものの所に行くなんて」
「わからんやつじゃ紙と硯箱を持ってこい」

「『世の中に酒と女は仇なり、さても仇にめぐり合いたいや』わかったか」

伝 太田蜀山人

第72話 破れ衣さしてくれついでくれ

「おい女郎、酒をつげ」
「あら、御禁酒じゃありませんか」
「禁酒は禁酒だが、こうなりゃ仕方もあるまい、涙をのんでの事じゃ」
「どうしたと言うの」
「『我禁酒、破れ衣となりにけり』じゃ」
「でしたらどうしたらよいの」
「『それさしてくれ、それついでくれ』」

伝 源内又は蜀山人

第73話 源氏が聞いたらどうなる

実話
五家荘は平家の末裔部落。数百年の弧村。
迷い込んだ旅人が
「婆さんよく知っているなあ、もっと話してくれ」
「ハイハイ、でも妾達の事を帰って話さんでおくれ」
「あれっ話を止めたじゃないか、それから先が聞きたいのじゃ」
「話もなあ、話してよいことと悪いことがある」
「大昔の事じゃ、話してもかまわんよ」
「そうはいかん、この話を源氏が聞いたら、私たちこの先どうなると思う」

第74話 東下りは止めようか

「浪花節に行こう、神崎与五郎の東下りじゃ」
「神崎与五郎の東下りなりゃいいがなあ」
「そんなのがあるかね」
「どうかしらんが、下りならろくな事たねえよ」
「そんなこたあねえよ、お前知らんのじゃ」
「それ見よ、鼻くえん涙は一下りだ 三下り半は離婚だ」
「そうかなあ、わしも東下りは止めようか」

第75話 まるで造花のようだ

「花は矢張り生きた花だ。造花はどんなによくできていても物足りないもんだ」
「そうですよ。匂いも味もなくて魅力が湧かないですね」
「それにしてもこの花はきれいだ。花弁の色、葉の色、そして…私こんな花初めてだ」
「いいですなあ。貰ったんですが洋種ですね」
「そうですか、まるで造花だ」

第76話 同じ名の久六

「久六さん、あんた今年百才になったので、村長さんからのお祝いよ。受け取っておくれ」
「あんた役場の人かな。わしはまだ72、3と思っていたんだがなあ」
「おかしいなあ、も一度戸籍をしらべようがお父さんはいつ死んだ」
「わしが生まれてすぐだから72.3年前じゃ」
「そのお父さんのお名前は」
「私と同じ名前の久六でした」

第77話 医者の金を貰うからなあ

「わしと同年輩とは思われん程君は達者だ」
「まあねえ」
「わしは年中医者通いだからやりきれんよ」
「おれも医者通いをしている。大工仕事でね」
「医者の謝礼が大変なこっちゃ」
「医者の金を貰うもんな、わし位のもんだろうなあ」

第78話 わしも名誉だ

「婆さん、それだけの大けがだ。一体どうしたのか」
「帰る時、横道に入ったら痴漢に後ろから抱きしめられたが、顔を見て『婆か』と言って前に突き倒されたのじゃ」
「手の骨折らしいな。大変な事になった」
「爺さん、あんた看護に来るんだよ」
「仕方あるまい。憎むべき犯人じゃ。それでも後ろからでも若く見られて幸せだ。わしも名誉だ」

第79話 一生いい目には会わん

「先生!悪いことは言わんが、眼医者は辞めたほうがいいですよ」
「何!眼医者をやめよとな。そしたらどうして生活するのじゃ。毎日来る患者も困るじゃないか」
「それもそうじゃが、先生!眼医者をしては、一生いい目にあいませんよ」

第80話 うちから出た鯛だ

「こんな大きな鯛を貰ったよ。家で食べては勿体無い。課長さんへの贈物にしよう」
「貰いものを贈るのは失礼だが、わかることもあるまいから、まあよかろう」
翌日の夕方、部下の家から又も大鯛をもらった。
「この鯛は大分家々を廻ったらしいなあ。随分くたびれている。匂いもしている」
「あれ、目玉の上に傷がある。うちから出た鯛だ」

 

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