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41話~50話

第41話 油揚げは飽いちょる

今日は爺さんの命日である。仏前では御院家さんが、屈託ない大声で読経している。
台所ではお斎の準備であろう、よい匂いをプンプン漂わしている。
この匂いが御院家さんの鼻をついたのだろう、読経をプッツリ止めて後ろ向き
「婆さん婆さん」
「ハイハイ」
「わしは油揚げにゃ飽いちょるき使いなんな」

第42話 動くと危ない

昼飯抜きで恩講に参った。久しぶりの銀飯だから腹の皮が、前から横にふくれる程食った。
帰ってみると、祭り餅を貰ってある。
「こりゃあうまそうだ、三つ位なら、少し無理でもよばれよう」
「まあ、あきれた」
「動くと危ない。そろっと、寝かしてくれ。そして枕もとに唐豆のくらげを置いといてくれ」

第43話 始末がよいから長もてする

「爺さん、あんた達者でいいなあ、もう何ぼになったかな」
「いつの間にか92になっちょらまい」
「なかなか、長もてするなあ」
「矢張り死にとうはねえきなあ、用心だけはしよる」
「そりゃあ、始末がいい」

第44話 煙草は荒いよ

誰もかれも刻み煙草の時代である。
「煙草がなくなった、一服くれ」
「わしの煙草は荒いよ」
「ないときは小言は言えん、わしも荒いのは馴れているから、荒くて結構、貸してくれ」
「荒いと言ってるじゃないか」
「荒くともよいと言ってるのぢゃ」
「荒いのぢゃからこも(粉も・方言で小さいの意)ないのぢゃ」

第45話 生かすも殺すもさじ次第

出刃包丁を逆手に握った泥棒がやぶ医者の寝室を襲った。
「おいやぶ医者、有り金全部出せ、出さねばこの出刃包丁がとぶぞ」
「そうかね、ちょっとここに待っていてくれ」
やぶ医者は隣室に行き、調薬用の小さじを一本取り出し、これを泥棒の前に突き出し
「どうぢゃ これがわかるか、殺すも生かすも、このさじ加減だぞ」

第46話 顔を洗うと乾かんよ

「君、今朝顔を洗ったか」
「それより君は洗ったか」
「洗ったよ」
「ほほう、この寒い朝にねえ」
「君は冷たいから、顔を洗わんと言うのか」
「冷たいから洗わんのじゃないよ。こんな寒い朝洗うと、容易に乾かんぢゃないか」

第47話 酒はすかん

「君はご馳走をすると言いながら焼酎ぢゃないか」
「焼酎は君の好物ぢゃないか」
「わしは焼酎がすきとは言っていないよ」
「それでも酒はすかんと言ったじゃないか」
「それは自分で買って飲む時の話じゃ」
「それじゃ、やっぱり焼酎がすきと言うことぢゃないか」
「違うよ、酒はなあ、高いからすかんまでぢゃ」

第48話 滅多にだすもんか

「あの奥さんは品がよくて、やさしくて、物わかりのよい方ですなあ」
「そうとも、太っ腹でひとの面倒も良く見る、全くの女丈夫と言うもんじゃ」
「あんな人は男でも少なかろう」
「そうよ、男勝りと言うもんじゃ。確かに男にはないものを持っているなあ」
「そんなよい物を持っていながら、日頃は出していないですなあ」
「そんな物は滅多にだすもんじゃねえよ」

第49話 早くて間にあわぬことはあるまい

「バスに乗るなら、もう出掛けたがよいぞ」
「まだ30分もあるから、まだ早いよ」
「早くて間に合わんことはない」
「ハイハイ、それじゃ行きます」
「オイ、せんちんに行く前に尻をふくやつがあるか」
「早くて間に合わぬことはあるまい」
「まだ死んでいないのに悔やみに行く者があるか」
「早くて間に合わぬことはあるまい」

第50話 あめがたと言って買っ

実話
お宇佐参りの帰りに土産店の前に立ち止まり
「こん、あねがた(あめ)は何ぼかな」
「一包が50銭」
「この包みがこぎれいで大きい、これをおくれ」
得をしたような喜びで風呂敷に包んだ。家に帰って開いてみると、木で作ったあめの型を竹の皮に包んだ陳列用のもの、みんな笑い転げていると婆さん
「仕方ない。あめがたを買ったんだから」

 

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