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31話~40話

第31話 尺足らずだ

徴兵検査は身長5尺3寸から甲種合格だった。
不合格になった小男に
「お前寸足らずで不合格になったんだろ」
「違うよ、不合格ではあるが、寸足らずでないよ」
「お前が寸足らずでないとはおかしいな」
「おかしい事があるか、尺足らずだ」

第32話 品は先金はあと

田舎から出てきたおっさん、城野に行くため宇島駅で汽車を待っていた。
これを見た気のきいた駅員が近づいて
「おっさん切符は買いましたか」
「汽車にまだ乗らんのに、先に金を払うのかな」
「そりゃあ、そうですよ」
「人力車は乗ったあとから金を払うがなー 田舎じゃなー 何を買うても先に金を払うようなことはないよ」

第33話 お前に見せているのじゃ

なかなかの負けずぎらいな爺さんが、字は読めないと聞いていたが、
「お爺さん、新聞を持っているが、字がよめるのかね」
「なに、新聞をみるぐらいは」
そりゃー知らなかった」
「人を馬鹿にするのも程々にせい」
「でも爺さん、その新聞は逆さまですよ」
「馬鹿!お前に見せよるのんじゃ」

第34話 わしのは帯時計

爺さん、もらった時計を大事に大事に帯の中に固く巻き込んで、友達と夜、相撲見物
「爺さんあんたん懐中時計はもう何時」
「わしは懐中時計は持たん」
「そうそうふところ時計だったかな」
「それも持たん」
「…」
「わしのは、帯時計ぢゃ」

第35話 立派ならそれもわしのもの

「おい君達、夕べわしのところのこつぼ(庭園)にクソをたれてヘコを置き忘れているが、誰か知らんかね」
「知らんなあ、わしの物じゃない」
「それが真新しい立派なヘコじゃ」
「そのクソは知らんが、ヘコはわしの物じゃ」
「そのクソがなあ、とても立派な左巻きよ」
「そんならわしのもんぢゃ」

第36話 鶴は両足を曲げると倒れるから

「この掛軸の鶴は片足を曲げて片足で立ってるなあ」
「鶴の立っている時は、いつでも片足よ」
「その片足が、おかしなことぢゃないか」
「おかしくないよ、わかりきっている」
「間抜けなお前には、わかる事ぢゃねえ」
「それがわからんお前の方が間抜けぢゃ」
「わしのわからん事が馬鹿のお前にわかるか」
「馬鹿はどっちか教えてやろう、両足を曲げたら倒れるぢゃないか」

第37話 海はこの倍ある

山に生まれ、山で育った子供、父に連れられて平坦地に初旅をした。
話には聞いていたものの、聞くと見るとは大違い。その広いことにただ驚くばかり、やがて周囲一里もあるという池の堤にでた。
「すごいなあー おっとん、これが海かな」
「馬鹿を言うな、海と言うもんなまだ、こん倍ある」

第38話 今んもんな義理がたい

「婆さん、あんたそん年で畑に行かんでも若嫁にいかすりゃいいのんに」
「百姓はせんちゅうなき、どげしゅうまい」
「もう来てから10年もなるじゃないかな。百姓ところに来て百姓をせんこつがあるもんか」
「わしもそげ思ぬうけんど、貰う時、百姓はさせん約束ぢゃったきなあ」
「ふーん、今んもんな義理がてえきなあ」

第39話 婆さんの遺言

「おばあさん寄附をお願いします。金持ちのあんたが一番はじめですよ」
「死んだ婆さんが、寄附は一番最後から附けと…遺言だからなあ」

「おばあさん、金を借りることになったから証人に立っておくれ」
「死んだ婆さんが絶対証人には立つなと…遺言だからなあ」

「おばあさん、味噌すり練木を貸しておくれ」
「死んだ婆さんが、使って減るようなものは貸すな…と…遺言だからなあ」

第40話 着炭王

実話
無学文盲の一鉱夫からの炭鉱王である。
一躍成り金になって間もなく、高位の名誉と地位が転げ込んで来た。さて東京に急用出張。
満面得意で、書生も連れず単身の旅、宿に着くや直ちに家人に電報を打った。
「タダイマ ブジ チャクタン(着炭) シタ ○○○」

その後、着炭王の異名、一世を風靡した。

 

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