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21話~30話

第21話 1人寝なら半分でよい

年頃の青年である。嫁がほしいものの、口に出してまでは親に言えない。
親はその事を、考えているのか、いないのか、もどかしい。
親の居るのを幸いに、寝ござと出刃包丁を持ち出して、今にも真二つに切らんとするのを見て
「お前は買ったばかりの寝ござを切って、どうするのんか、勿体ないじゃないか」
「1人で寝る位なら、半分でいいじゃないかな」

第22話 竹ん皮だけおくれ

店の前に立った小僧、弁当包みに竹の皮がほしいが、ただではくれまい、と思いながら
「おっさん、こん砂糖はなんぼかな」
「五銭がんぢゃ」
「これを包んである竹の皮はなんぼかな」
「竹の皮ん方はただぢゃ」
「そんなら砂糖は入らんき、竹ん皮だけおくれ」

第23話 かやあるよ

「おい、お前もう寝とるなあーそれにしても、この蚊の多い晩に、蚊帳もつらんで…君、蚊帳がないのじゃないか」
「かや あるよ」(かやは買えばの方言)
「そうか、蚊帳あるのか」
「決まっているじゃないか、かやあるよ」

第24話 海は汐の引くのを忘れとる

貝堀に来たが汐が引いていない。暫く休んで来たが、まだあまり引いていない。
「今日はなかなか汐が引かんなあ」
「汐が引くのを忘れとるのぢゃあるまいか」

置座に掛けて家族一同の夕涼み
「今夜はお月さんが容易にあがらんなあ」
「お月さんが上がるのを忘れとるのぢゃあるめえか」

第25話 お前が頭を上げたら行く

挨拶の長いことで評判の和尚が来ている。困ったなあー
「和尚さんお早ようございます」
と頭を深々と下げた。暫くして頭を上げてみたが和尚さんはまだ下げている。
これではすまんとまた下げた。
和尚も頭を上げてみたら、相手が下げているのでまた又下げた。
交互にさげること半日。
「和尚さんお月経に行くのぢゃありませんか」
「お月経はどうでもよい、お前が頭を上げたら行く」

第26話 へこを着換えてきた

円平さんと言えば日和見の名人だが、汚れベコをしているから天気の時はカラカラ、雨前は湿気が来て、ベトベト、これがその秘訣。
英彦登山も円平さんを同道しているから一同安心、宿に着いてくつろぎながら
「円平さん、明日は山登りだがお天気はどうかな」
「日和!わしにゃあわからん、ヘコを着換えて来たから、わかるもんか」

第27話 近頃んもんは筆で飯を食う

実話。
醤油売りのおっさん、時間が正確だから時計屋と言われた程の人、几帳面な顔で来る度に家の人達に、何か一口笑わせて出て行く、その一駒
「近頃んもんな、畜生のように毛の生えたもんぬ着て、下駄は履っきらんぢゃろう、靴の中え足をさしこんで…箸も持ちきらん事にゃ筆で飯を食う」

第28話 預けたんぢゃない借り金ぢゃ

実話。
銀行の頭取さんで毎日自家用の人力車で出勤、車夫は鞄を持ってのお供である。机の上に鞄を置いてから、広げてある帳簿の数字を見て、驚き顔で
「沢山なお金を預けてありますなあー」
「馬鹿」
遠慮ない大声で評判の頭取、一喝してから
「預けた金ぢゃない借った金ぢゃ!」

第29話 ひらまえの方がよくきれる

実話。
此所は金物屋でその主人。お客に対して、藁切りの切れ味についての説明、なかなかに雄弁、
自慢話の果てにやや押し売り的
「この前もあんた方で買ったんですよ」
「よう切れたろう」
「可成切れたが…それよりも、あんたん、ひらまえん方がようきるるなあ」
この一言に、この主人、グーの音もだせない。

第30話 数分後にあ痛ー

実話。
でっぷりと太った肴売りのおばさん、どす声で生ぬるくだらしないものの言い方。
神経がにぶいから動作も鈍い、血の巡りが悪いから、尋ねてから一呼吸して「ハーイ」と返事である。
或日、自転車に突き当てられて仰向けにドスーン。
それでもキョトンとして起きようともしない。
人々に抱き起こされてから、数分後にやっと
「あ痛ー」と、そろそろ顔をしかめた。

 

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