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1話~10話

第1話 きれい好きの嫁さん

「隣に来た嫁さんはきれい好きだよ。大便所から出ると、小川に行って爪の垢まで出してしまう程、念入りに手を洗うのはいつもの事だからね」
「そう言えば、見るからに身ぎれいだ」
翌朝、この嫁さんが大便所から出た。今日も念入りに手を洗うに違いないと思って見ていると、小川に行かないばかりか手を全く洗わない。おかしいなあーと思ったから、
「あんた毎日大便後あんなに手をよく洗うのに今朝はなぜ洗わなかったの」
「私ねえ!今朝は紙を持って行ったよ」

第2話 おふくろの首つり

田舎から出て来た下女、言葉遣いに気をつかって、
「おくさん、おふくろが首をくくって下がっていますよ」
「どうしたとね、おふくろが首をくくって…」
急いで行って見ると、首をくくった袋がぶら下がっている。
「でたらめにをつけては困るよ」
「ハイ」
暫くしての事、桶の中に豆が入っている。この豆はどうすればよいのか判らない。奥さんに聞いてみようがをつけると困ると言ったから、今度こそ困らせぬように
「くさん、くさん、けの中の豆はどうしようか」

第3話 百姓娘の嬢さん言葉

田舎の百姓娘が、良家に遊びに来て、お嬢さんと並んで鳥篭の雛を見ている。百姓言葉丸出しでは笑われるから、お嬢さん並みのよい言葉を、おちついて、ゆっくり、
「こちらの、ひよこは、大層可愛らしい、あちらには、おちょろちょろ、こちらには、おちょろちょろ」
此所まで言った時、突然ひよこが篭から、くちびるを出した。びっくりして早口になり
「ありゃ、こんがきゃあ、そっからつろでえた」

第4話 夜道は日が暮れない

「君もっと急ごうじゃねえか」
「急ぐこたあ ねえじゃねえか」
「とうとう、日が暮れたじゃないか」
「だから急ぐこたあ ねえよ。夜道じゃもう日が暮れる心配があるめえ」

第5話 褌のなかのどじょう

無頓着で横柄で、だらしないお爺さん、田の草取りで田の中を這ってから、木陰で一休み、何だか垂れぎんのあたりがモジモジする。
「何だろうな」
垂れ下がった六尺褌の中に、どじょうが三匹。

第6話 へこどまかーりー

男様々で、世は正に男尊女卑。
特例もあって此の家では、嚊天下、むこは足軽、南向きで薄ぬるい。
「一寸お前さん、そこにあるわしの腰巻きをとっておくれ」
(のんきな足軽歌のような節をつけ)
「おいそりゃそりゃ、へこどま軽りい」

第7話 昔から同じ年

「お爺さん、あんた年はもう何ぼになったかな」
「わしは昔から床やん又こと同じ年ぢゃったきなー今も同じ年ぢゃろう」
「そんなら床やん又こは、何ぼになるかな」
「わしが人ん年まぢ知るかな」

第8話 ちちなしわらじ

娘の縄ないをしている所に行き、向かい合って草鞋を作り初めた。
娘を見ると、着物の裾が乱れて僅かに開いている。
足を動かす度に大きく開閉するので気になって支方がない。
草鞋は作っているものの心は、その辺を去来する。
「おい!!わが、ちちはつけんのか」
「あつ!!しまった」
見ればちちなしの草鞋、なんと一尺五寸(約45センチメートル)。

第9話 野小便料

風紀取り締まりのやかましい時だから明治も末期。
野小便をしていると巡査に見つけられた。
「おい、野小便だな。駐在所まで来い」
「何を言いますか。野小便一回は罰金五十銭と相場は決まっているのじゃ」
「では、それでもよかろう」
この男懐から一円銀貨を掴み出し、気前よくポイと投げ出し、
「もう一回分もいっしょだ」

第10話 コタツーは父の顔

「繁夫!今夜は寒いからバンタを入れてやる。広間にあるからもっておいで」
「ハーイ」
灯火のない広間は暗がりだが、破れ障子からもれる薄明かりに、茶褐色がボンヤリ見える
「これだ」
左右に両手を当てウンと持ち上げた。
「アッ!」 柔らかい、温かい
ピカ禿げの父の頭だった。

というのは児童作文を読んでの実話

 

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