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  後藤 元秀 市長

 

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市長の部屋 令和4年3月号

「ひとり親家庭対象の学習教室に閉鎖の危機」「母子寡婦福祉会の休会で」

 春は、人が動く、変わる季節です。学校を卒業する、企業・事業所の人事異動で地域や組織が一新されます。うまく変貌すれば人心がまさに一新され活力の源になるはずなのですが、いまの少子高齢化にある自治体では、これを機に組織の休会、消滅の流れになる。そんな残念なことも避けられない、状況にあります。

 身近な例で言えば、70年超の歴史ある豊前市母子寡婦福祉会(中井澄江会長、会員139人)が、休会という道を選ばざるを得ない状況にあります。中井会長さんや役員のみなさんが昨夏、その意思を伝えに市役所に来られています。「歴史ある組織。弱い立場の方々が横に絆を持つ組織はいまこそ大切です。何とか、活動継続はできませんか」と、再考をお願いしましたが、「現在の会員は高齢化、さらに会員減少するばかり」「若い世代が働きながら、子育てしながらでの活動継続は無理という声が多い」との理由で方針を固めたとのことでした。

 いまの会は、会員の支え合い活動だけでなく、県事業を活用して、ひとり親家庭の子どもたちを毎週木曜日の夜、公民館に集めて、地元の教員OBの方々の力を借りながら学習教室を開いてきました。県下でも母子寡婦福祉会が解散した市町は多く、こうした活動ができるところは少ないなかでの、同会の頑張りに頭が下がるばかり。もっと早く窮状に気付かなかったことへの反省。遺憾の限り、です。

 同会は当初、中井さんの地元、横武コミュニティセンターで教室を運営。多い時には20人ほどの子どもたちが通ってきていました。現在は千束公民館に移設し、15人ほど登録。5人しか来ない日もありましたが、コロナ休止以外は、子どもたちの笑顔のためにご尽力いただいています。

 祖父や祖母との3世代家庭でない子どもたちにとって、中井さんたちや先生方の存在は大きく、前向きに生きていくきっかけになった子どもも多かったと思われます。教室は単に勉強を教えてもらうだけでなく、子どもたちは「おばあちゃん」である中井さんたちとの会話でなごみ、癒される時間だったのでは。中井さんたちが自分のお金で子どもたちにふるまうお菓子や飲み物は、子どもたちに人の温もり、空気の暖かさを直に伝える場であったはずです。もちろん、中井さんたちにとっても、子どもたちが心身ともに伸びていく姿は喜びであり、励みでもあったと思います。

 そんな環境の中で、元気をバトンタッチしながら高い目標を持ち、進路を決めた子どもたちも多かったと聞きます。でも、コロナ禍もあって上記のように苦渋の決断を余儀なくされています。血はつながっていないけど、「おじいちゃん」「おばあちゃん」が教え、支えてきた学習教室閉鎖の危機です。

 市も議会の方々とも図りながら、どなたか後継者が名乗り出てくれば、教えてくださる先生方が引き受けてくださるなら、どんなあり方がふさわしいのか、など衆知を集めながら必要な財政は出動したいと考えています。「困ったときに支え合う豊前市でありたい」という共通認識をお持ちの方々、お力を貸してください、ご意見をお寄せください

 

市長の部屋 令和4年2月号

「1月は行く、2月は逃げる、ですが逃がしてはなりませんね」

 豊前市観光協会さんが求菩提山の麓で生産されたそばで作った乾麺「禊みそぎそば」を食した年越しから、コロナ、コロナ、オミクロン、と振り回されながら、周りのみなさんと年始の挨拶も十分にかわせないまま、気づけば如月を迎えています。あっという間、まさに「1月は行く」―こんな思いの方も多いのではないでしょうか。

 新型コロナ関連では、1月8日から医療従事者に3回目の接種を始めています。

 2月には高齢者施設の入所者、通所者と従事者に。3月3日からは75歳以上のみなさんを毎週木、土、日曜日に。4月末までに65歳以上の約9000人の接種を終える予定です。18歳から65歳未満のみなさまの接種は6月末までに完了する予定です。

 このほか、これまでのファイザー製だけでなく、モデルナ製ワクチンが供給されることになっています。5歳からの接種など、これからどのように対応していけばよいのか。これまでにない課題も見えています。自治体にワクチンが安定供給されることを前提に、事故なく混乱せず、安全に集団接種を進めていかなければなりません。市民をはじめ、関係者のみなさんのご理解、ご協力を重ねてお願いいたします。

 収束しないコロナ禍ですが、この正月に北九州市のリバーウォークで行われた新春ステージの「豊前神楽集団若楽」を見に行ってきました。豊前天狗太鼓のみなさんとの共演で、たくさん集まった見物のみなさんに大きな拍手を、何度も何度も受けていました。ストーリーは詳しくわからなくても善を救い、悪を懲らしめる勧善懲悪の世界は見るだけで分かりやすく伝わり、共感されます。

 舞台が終わったあとに、見知らぬ高齢の夫婦が「いままで、うみてらすにはお邪魔していたけど、こんな素晴らしい神楽があるなんて感動しました。豊前市に行ったら見れるんですか」と。若い女性連れからは「驚きました。何が始まるのかと思ったら、もうびっくりです」という言葉をいただきました。

 「彼らは普段は会社勤めでまじめに働き、休み返上で練習を重ねて舞台を務めていますから、いつでもという訳にはいかないんですよ」と、なんとももどかしい返答しかできませんでした。

 若楽の公演は、毎回のようにチケットが短期間に完売の人気ぶりなのはご承知の通りで、一度見たら惚れこんでしまう人も多いようです。SNSで若楽の映像に関心を持っていただいている外国の方からも「コラボできないか」などの問い合わせも来ているようです。世界のみなさんに若楽を知ってもらいたい。そして豊前市のすばらしさに気づいて、豊前市とつながってもらいたい、と願っています。

 2月は「逃げる」と言われますが、時のたつのは速いものです。オミクロン株から市民のみなさまの命と健康を守りながら、伝統の神楽はもちろん、若楽についても行政としてできる限り応援していきたいと考えています。

 

 市長の部屋 令和4年1月号

「希望を見出し、逃げずに反転攻勢かける年に」

 寅年の新春をお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。新型コロナウイルスが世界を巻き込み、猛威を振るい2年ほどになります。さらに、新種のオミクロン株が蔓延しそうな勢いで油断できない年越しとなりました。みなさまには自分でできる防御、家族や近隣で支え合っての予防をお願いし、行政としてできることをしっかり取り組みながらこの「国難」をともに乗り切りたいものです。コロナ禍の収束と、元気な活力ある豊前を今年こそは取り戻したいと願って迎えた新年です。

 豊前市も今年、市制施行67年目の年を数えます。半世紀を過ぎあらゆるものが変わってきました。最たるところが人口です。市政へ移行した昭和30年に37,936人だった人口は直近で24,507人(12月16日現在)と2/3 に激減。このままでは減少傾向はもっと続きます。昨年の12月議会でも「人口対策」の質問が出るなど、議会からも対策強化を求められています。市として歴代の市長も、さまざまな手を打ってきたところではありますが、「国内での人口争奪戦」に勝てていないのが現状です。

 外国人実習生の増加や、台湾とベトナムからのサテライトキャンパス(分校)誘致などの「人口増加策」やDX(デジタルトランスフォーメーション)時代にふさわしいスマートシティを目指して、魅力ある住んでみたいまちづくりを目標に掲げていますが、成果はこれからの努力次第です。市政執行の責任者として全力を尽くす覚悟です。

 こうした中で、人口が多かった当時の公共施設を見直さねばなりません。維持すら難しい、老朽化して建て替えや修繕が十分にできない建物を整理して、人口規模に見合った施設への転換が必要です。市民会館がその筆頭ですが、建て替えの優先順位が、国の指導で地震などの災害に備えた防災拠点としての市役所整備(耐震化)に方向転換です。さらに、市立小中学校の再編が待ち構えています。

 現在、小中学校の児童生徒数は1学年あたり約200人ですが、平成末から令和初めの出生数は150人前後(令和2年度は133人)に急減しました。さらに今後学年100人程度に減少していくことが心配されます。 加えて、児童生徒1人ずつにタブレット端末を貸与するICT教育への方向転換で、義務教育が大きく変わってきました。

 そこで、市教育委員会は豊前市の未来を担う子どもたちにとって魅力ある教育環境を整備するために、10の小学校、4つの中学校を、新設中学校1校と、現八屋・千束中学校を改修した2つの小学校に、合岩小学校を改修・増築して9年制の義務教育学校にするとともに、組合立の吉富中は維持する再編成案をまとめ、議会や区長会などに提示しているところです。今後、市民のみなさまにできる限り直接説明し、ご理解いただけるように努めなければなりません。

 厳しい人口減少が続く中で、どんな未来像を描くのか。市民のみなさまにこれを提示しながらご意見を聞き、ご理解を求めて前に向かっていくか。現状から逃げずに、希望を見出してどのように反転攻勢をかけていくか。問われる1年になりそうです。

 

 市長の部屋 令和3年12月号

「困ったときに助け合うのが真の友」「国際共生社会を築く」

「困ったときに助け合うのが真の友です。ありがとうございます」―在福岡ベトナム総領事館で、私のことを「兄弟」と呼ぶヴー・ビン総領事が、豊前市からの支援金をお渡ししたときの感謝の弁です。ベトナムは夏にコロナ感染の第4波を受け感染が急拡大。今もワクチン接種がワクチン不足などで追いつかない状況です。

 こうした中、ヴー総領事が171人のベトナムの方が住む豊前市に「ワクチン基金に協力を」と、市役所に来られました。豊前市は昨年のコロナ拡大のころマスク不足が生じ、困っていた時に、ヴー総領事が2万枚のベトナム製マスクを自ら届けてくれました。このご恩返しに、今回の支援金贈呈です。

 さらに、市職員からも寄附を募り、市役所玄関ホールにも12月10日まで募金箱を設置しています。ベトナム人実習生採用企業のみなさんにも基金を呼び掛けています。みなさんもご協力ください。同じ豊前市民のベトナム人実習生の母国が困っています。

 ベトナムには自動車部品など多くの工場が立地しており、これらの工場の生産がコロナで止まったために、日本の工場も一時稼働停止しているところがあるようです。コロナの感染、部品生産など世界がつながっていることを象徴した出来事です。つながるもの同士が有事にどのように助け合うか、試されてもいます。

 試される、と言えば、台湾との関係も同じです。台湾の大学のサテライトキャンパス(分校)を設置するにも、受け入れる豊前市の受け入れ力が試されます。外国からの人たちを、文化の異なる人たちを受け入れ、共生するには、生活習慣の違いなど多くのハードルもあると思います。課題を乗り越えて、外国の力を借りながら人口減、活力減を乗り越え「国際共生社会」を築いていかねばならない時代に来ています。

 ヴー総領事が会談の後、2人の若いベトナム人男女を紹介してくれました。「この2人が豊前市でベトナムなど東南アジアの食料・雑貨を取り扱う店を開きます。力を貸してください」と。宇島駅前の商店街を希望しているようです。

 商店街の一角にある築上館跡は、外国人技能実習生などの教育機関に転身する可能性があるようです。いよいよ、商店街にも外国からの人たちの姿が多くみられることになりそうです。文化の違う人たちとの共生社会到来。賑わいも少しだけよみがえる期待も持てるでしょう。

 商店街の再生は、人口減少する地方の大きな課題です。これを少しでも解消するには民間のこうした力を呼び込まねばできません。税金でできるのは道路整備や照明など。人流を増やさなければ、再生の一歩は踏み出せないのが 実情です。

 コロナ集団接種の会場で、接種後に声をかけた12歳くらいの男の子が、キラリと光る眼差しで「台湾の学校をつくってください」と。ドキッとしながら、こんな少年の輝く近未来のためにいろいろな声もあるかもしれないが、全力を尽くそう、と決意した一瞬でした。

 

市長の部屋 令和3年11月号

「サーモン陸上養殖へ」「ワクチン接種、ご協力への感謝」

 秋にも咲く豊前桜の優しいピンクの花びらが、さわやかな高い空に美しい、うみてらす豊前の小さな庭。このうみてらすの生け簀の主役がハモから豊前本ガニ、シラサエビ(芝エビ)に変わり、移り行く季節を感じます。

 同じ海辺に立地する九州電力・豊前発電所敷地内に、同社と(株)井戸内サーモンファームなどで構成する「フィッシュファームみらい合同会社」が誕生。これから陸上養殖施設の建設にかかり、来年度中には養殖を開始して、次の年明けの出荷を目指すようです。

 具体的には、米国由来のサーモンの受精卵を輸入して、湯布院の清水で20センチ級まで育成。これを豊前市に運び、地下水と海水で育てます。独自に開発したえさを与えて3キロ級に太らせて販売する計画です。年間出荷量290トンを目指し、豊前市の新たな魅力ある特産物となります。楽しみですねえ。

 こんな明るい話題がたくさんあればいいのですが、相変わらずに収束を見ないコロナ禍です。年末年始には第6波も、と危惧されているところですが、豊前市では感染者が発生以来、10月18日まで延べ160人と人口比でも県内低位で頑張っています。これも市民のみなさまの「3密を避ける」「手指消毒の励行」「マスクの着用」など基本対策の努力、ご協力のおかげと感謝しています。

 そんな中で行われてきた5月からのワクチン集団接種は、10月3日までの計画で延べ45日間。加えて追加の10月9日と30日の2日間、計47日間実施しました。10月11日現在での全人口に対する接種率は、2回接種が74.8%。県下は64.7%、全国は64.8%と豊前市がみなさまのご協力で上回っています。が、油断できません。どんな時でも場面でも、マスク着用、手指消毒励行をお願いします。

 集団接種会場で7月から行いましたマイナンバーカード申請受付には、たくさんの市民のみなさまにご協力いただきました。10月10日時点での交付手続き終了は12,525人、交付済み11,572人、交付率は46.4%で県下60市町村の4位となりました。役所に来なくても住民票などの交付手続きができるようなデジタル社会の基本となるマイナンバーカードです。今後も期日前投票や確定申告にあわせて、申請しやすい環境づくりに努めてまいります。これからもご理解とご協力お願いします。

 このようなワクチン集団接種、マイナンバーカード申請受付は、市職員として、当たり前の仕事ではありますが、職員は土日の休みを返上して勤めてくれました。47日間を全く休まず皆勤の職員も多数です。集団接種では、市民のみなさまのご理解、医療関係者のご協力が、これまで大きな事故なく実施できた基本の力ですが、縁の下で支えてきた職員のことも知ってください。

 実施当初は、不手際を指摘され、叱られながら改良、改善して頑張ってきました。悔し涙を流したものもいます。後半は、怒られるのではなく、おほめの言葉もしばしばいただくこともあり、職員の励みになってきました。いまも心の支えになっています。頑張ってくれた職員にこの場を借りて感謝を届けさせてください。「ありがとう!そしてさらに市民のみなさまのために尽くそう!」

 

市長の部屋 令和3年10月号

「接種率72.2%、県国を10ポイント上回る」「マイナンバーカードは48%」

 決算議会である9月定例会が終わりました。令和2年度一般会計の総額150億円に達した予算のうち新型コロナ対策費は総額約31億円です。1人当たり10万円の給付金が約25億円。このほか、感染症対策事業者応援金、エール券利用による地域経済対策としてそれぞれ約8千万円。キャッシュレス決済等インフラ整備に約4千5百万円。コロナ対策にもなるタブレットを児童生徒に1人1台ずつ配して進めるICT教育環境整備に約9千8百万円となっています。コロナ対策は今年度も引き続き大きな柱として取り組んでいます。

 コロナワクチンの集団接種は、医師会の先生方をはじめ、みなさんのご協力のおかげで順調に進んでいます。一体どれくらいの市民が接種を終えたのか。気になるところですが、1回目で見ると9月12日時点で75歳以上の方が 90.5%、65歳~74歳の方で92.4%、50歳~64歳の方で93.0%、16歳~49歳の方で70.8%、12歳~15歳の方で48.3%です。65歳以上の方の2回目接種はすでに終了しているので、10月中には残りの方々の2回目接種が終える 予定です。

 1回目の12歳未満を含めた全市民の接種率は72.2%。県は62.7%、国は63.0%です。まだまだ、打ってない方もおられますので、希望される方が接種できるように10月までを目途に万全な態勢でお待ちします。

 一方感染者ですが、8月が最も多く83人。男女別では男性79人、女性76人。世代別では最多が20歳代34人、次いで40歳代28人、50歳代21人、30歳代20人。60歳代以上は合計25人です。

 接種会場で、7月3日から始めたマイナンバーカードの申請手続きには9月12日までに延べ接種者の約10%、1728人の方の申請をいただきました。これで全市民のほぼ48%の方に申請、取得いただいた計算になります。これは県内でも上位で、集団接種会場での申請手続きは総務省や、県内外の自治体から問い合わせが複数回あるなど注目されています。ご協力に感謝です。

 新型コロナ対策に併せて、急進しているのが台湾との連携事業です。先月号でお知らせした後、台湾の総領事館(在福岡経済文化弁事処)から陳忠正総領事名で「台湾の日本における4番目の中華学校・福岡中華学院の設立について、政府の管轄機関である僑務委員会が、豊前市に置くことに賛成した」との内容の公文書を送ってこられました。校舎などについて協議しなければなりませんが、「120年以上の歴史を持つ一番歴史の古い横浜中華学院の分校」という位置づけです。

 横浜中華学院は幼稚園・小中学校・高校で約470人が学んでいるようです。日本人児童、生徒も通えるとのこと。この分校を豊前に設置し、先生方が豊前市からオンラインで九州全域の台湾系華僑の子弟などを教育。年間の登校日には豊前市に集まって集団で教育を受けるシステムのようです。

 本校の横浜との縁が深まり、豊前市を全く知らなかった人たちが豊前市を知り、関心を持ってくれる。いろいろな情報交換ができ、お互いの発展につながるチャンスが生まれそうです。台湾から目が離せません。

 

市長の部屋 令和3年9月号

「台湾の大学分校設立などを目指し」「総領事館、大学連盟と連携協定」

 台湾の総領事館である台北駐福岡経済文化弁事処と豊前市は7月20日、台湾の大学のサテライトキャンパス(分校)を市内に設立して学校、学生の交流、人材育成を目指すことを目的にした連携協定を結びました。自治体と台湾が持てる情報、力を合わせて目的達成を目指す画期的な取り組みで、8月20日には総領事立会いのもと、オンラインで台湾の私立科学技術大学校院協進会(加盟66校、総学生数約43万人)と同じ目的で連携協定を締結しました。

 現在、市内には約350人の外国人が在籍していますが、その多くは工場などで働く技能実習生です。そんな豊前市に、台湾の大学が協力して分校を設置し、概ね4年間の在学期間の数ヵ月から、1年間ほどを豊前市で学ぶシステムです。現状では、人口減のため新たな大学創設は文科省が認可しない状況にありますが、海外の大学が分校をつくり学生を送り出すことは認められる見込みです。

 止まらない人口減と、少子化で厳しい豊前市にとって台湾の学生が「留学」にやってくることは大変ありがたいことですし、学生の町づくりの活力源として歓迎したいと思います。

 なぜ、台湾の大学分校設置の構想が始まったかと言いますと、実は昨年6月に、豊前市議会が台湾のWHO(世界保健機構)へのオブザーバー参加を認めるよう、政府が働きかけることを要請する意見書を九州・山口地域で初めて採択したからです。「このご恩は忘れません」と以来、陳忠正総領事が、分校設置を推進してくれています。「台湾への350万回分の新型コロナワクチンの提供など、日本には恩義があります。恩返しです」と何度も繰り返し述べられる陳総領事には、古き良き日本人の姿が重なって見えます。

 日本と台湾は戦前の、明治期以来の50年間の日本統治時代からの強いきずながあります。当時の町づくりをはじめ、教育、上下水道、鉄道、ダム、農地開発は歴史遺産のような存在で大切に顕彰されています。アニメや芸術面でも日本のファンは多く、親日ではよく知られています。

 若い人たちの日本へのあこがれも強い、と言われており「いい環境で学べ、日本文化体験で日本語を上達できれば、将来は日本で働きたい、移住したい」と考えている学生も多いと聞きます。そんな人たちの受け皿になり、ともに発展する豊前市になるチャンスが目の前に現れてきました。九州歯科大学などもこの構想に参加を打診してきています。どのように受け入れて、ともに発展するいい関係を伸ばすことができるか。受け入れる力が求められます。

 我々の子どもや孫が将来、海外で活躍することも当たり前になる時代です。どのように受け入れてくれたら子や孫が安心して頑張れるか、を考え「豊前市が彼らにとって第2のふるさと・母国」と思ってもらえるような受け入れができることを願い、この連携協定の成功を目指しましょう。

 

市長の部屋 令和3年8月号

「負の遺産が、チャンス生む素敵な財産に」

 パンデミック化した新型コロナウイルスが収束しないなかでの東京オリンピック・パラリンピックが始まりました。コロナ感染拡大が止まらず、不安はぬぐえませんが、このために人生をかけてきたアスリートの晴れ舞台。やるからには日本選手の大活躍を見たいものです。

 こんな五輪・パラリンピックですが、思い起こせば中学生のころあった東京五輪は、華やかな舞台であったと記憶に刻まれています。テレビが一気に普及して他の家電、マイカーブームへ。五輪後の日本は高度成長路線を一気に駆け上り、経済大国に成長したのは多くの方の記憶にあるところではないでしょうか。

 経済成長期、市内に次々と建てられた公共施設が半世紀ほど経った今では外観も内装も老朽化。耐震の心配をしながら長寿命化工事するか、解体撤去するかの二者択一を迫られています。どちらを選んでも多額な経費が必要で、頭を抱えてしまいます。

 そんなとき、大都市を拠点に「リノベーションまちづくり」事業の先駆者として全国的に活躍する建築家と、情報通信企業で社会貢献事業を担当、「豊前市のためにひと肌脱ごう」と豊前市政策アドバイザーを引き受けてくれたばかりのお二方が別々に来訪。市内各所を歩いて視察してくれました。

 そのひとつ。立地場所はいいのに古さが際立つ建物群を見て、おふたりから偶然にも「これ古いけど魅力的ですよ」「豊前の東京・表参道ヒルズ(古いアパートを改築して魅力あふれる店舗・住宅などにした施設)になりますよ」「建物を手放して民間に任せたらどうですか」「DIY(自分で大工仕事をして改造)で自分流に改築して使えたら希望者が集まりますよ」などなどの予期せぬ発言。

 「維持しているだけでも負担が多く大変」「建物を壊して更地にして、売却か別の活用をしたいが、財政負担が半端じゃない」「財政事情が許さず、いつになったらやれるのか」「やっても買い手がつくのか」と、しか考えてこなかった「行政的思考」とは全く異なる発想。また「宇島駅前も情緒ありますね」「いろんな情報発信ができますよ」など、市内にどっぷりつかりこむように暮らしていては気づかぬ視点に、「目からウロコ」の連続でした。

 われわれが「負の遺産」としか考えてこなかったのに、「チャンスを生む素敵な財産」になる可能性を持つと言うのですからおふたりの発想にはびっくり。それも直接会ったこともないおふたりが「素晴らしい財産」とこぶしを 握るんですから。

 なんでも地元志向の強い考えからすると、まさに「若者」「バ○者」「よそ者」にしか見えない空間です。地元に住んでいる者には見慣れて見えないところに価値を見出してくれたおふたりに感謝です。

 コロナと闘いながらの五輪・パラリンピックですが、大事なく、成功のうちに行われますことを、そしてそのあとに元気な日本が取り戻せますことを願わずにはいられません。

 

市長の部屋 令和3年7月号

「ワクチンの集団接種」「7月までに65歳以上を終え、8月からは64歳以下の世代に」

 「心配しなくてもいいですよ」との声掛けに、無言のまま。「あとは心の準備だけですよ」と、付け加えると、途端に緊張が崩れ、にっこりと-。新型コロナワクチンの集団接種会場である多目的文化交流センター2階入り口で、よく出会う光景です。

 「予約が取れない」「市役所は何をしている」などのお叱り、苦言をいただきながら始まった75歳以上の集団接種。5月13日から開始しましたが、ここでも「座ったり立ったり、大変」「どっちに行けばいいか分かりにくい」などのご指摘の数々でした。

 接種に来られる方が困らないで気持ちよく接種を終えることができるにはどうしたらいいのか。会場を運営する市役所の職員は、豊前築上医師会をはじめ民生委員のみなさん方などのご協力をいただきながら、接種会場でお受けした市民のみなさんのお言葉を真摯に受け止めて毎回の接種後、設営や対応について改善を重ねています。

 こうしたご協力と改善の結果もあってか大きな混乱がほとんどなくなり、開始から1ヶ月後の6月13日現在、約5600回の接種が完了。年度内に65歳以上になる高齢者に対する1回目の接種率は53%です。このほか、福岡県が先行して4月に医師や看護師など医療従事者に。5月には市が重症化リスクの高い高齢者施設、障がい者施設の入所者及び従事者などに接種しており、この市報がみなさんの手元に届くまでに合わせて約1350人が2回目を終えます。

 次いで、年度内に71歳から74歳になる方、同じく65歳から70歳になる方の順で接種を進め7月18日を目標に2回目を終える計画です。ご理解とご協力をお願いします。

 このあと豊前市は、基礎疾患を持たれる方々に対する個別接種を医師会と相談しています。ワクチンの供給量を見極めながら10代から64歳までの、若い世代に8月から接種を開始しますが、どのようにしたらいいのか、担当職員が最善を尽くすべく頑張っています。

 その姿を一緒に居ながら「市民のみなさんの不満や混乱を少なくできる最善の接種計画とは」「いわゆるエッセンシャルワーカーと呼ばれる食や物流、販売、環境保全などで生活を支える職業従事者のみなさん」「受験を控える受験生のみなさんをどのように優先すべきか」などなど、悩みます。

 最後の決断は、どんなに怒られようともしなければなりません。最終責任は市長にありますが、「市民のみなさんの声をしっかり、丁寧に聞いてほしい」と言われています。9月末までに希望する方全員の接種が完了できるように、みなさんからのご意見もいただきながら決断します。

 集団接種会場出口に戻って来られた方の表情は、来たときとガラリと変わる方が多く「テレビで大きな注射針が刺される場面を見て痛そうだったが、あれっという感じ」「ちょっと痛かったけど、すぐに終わった」と明るい表情の方が多いです。しかし、接種後に高熱や倦怠感など副反応が出るとか。それは薬が効いている証拠ともいわれます。いずれにしても、安心して接種を受けてください。そして、お気づきのところを市に届けてください。笑顔回復 のために。

 

市長の部屋 令和3年6月号

「流域治水で、地域防災力強化」「みんなで広げる安全安心の輪」

 新型コロナ感染拡大で福岡県として3度目の緊急事態措置となりながらワクチン集団接種が進んでいます。接種予約に際し混乱が生じ市民のみなさまにご不満、ご心配をかけ申し訳ありません。この場を借りてお詫びいたします。

 これまで、医療従事者をはじめ高齢者施設の入所者と施設従事者、75歳以上の高齢者のみなさんから接種が行われていますが、みなさまのご理解とご協力に感謝申し上げます。「ワクチン接種が安心につながる」との思いで、希望される市民のみなさまに速やかに接種できますように、これからも取り組んでいきますのでよろしくお願い申し上げます。

 コロナ禍に見舞われながら季節は移ろい、雨の多い季節を迎えています。世界的な気候変動で雨量が「過去に経験したことのない量」に増しています。これに伴って水害も大きく、激しくなっています。昨年度の地域要望に、洪水被害への対策が各地区から出されています。この事態に、どのように立ち向かうのか。行政として大きな課題です。

 これまでの治水対策は、水路や川を強靭化する方向を基本に取り組まれてきました。降った雨水を水路から川へ、川から海へ、とスムーズに流し込めるように、です。ところが、水路や川の受け入れ能力をはるかに超えた降水量に、氾濫が各所で起きています。道路や田畑だけでなく住宅にも被害が及んでいます。

 こうした水害を防ぐために、国は流域治水という考え方に舵を切っています。河川だけでなく、河川流域全体で治水するのです。明治末期に取り入れたドイツで行われていた川の護岸を高く、強くする方式から、河川への負荷を軽くする方式への転換でもあります。

 豊前市でもこうした流域治水に取り組まねばならない、と考えています。「流域の田畑をほ場整備して水路を強化する」「田んぼダムで水田の貯水能力を高める」「住宅や事業所に降った雨を雨水タンクに貯める」「アスファルト舗装などで増えた表面水を、雨水浸透桝などで地下水に」「河川流域に遊水池などを整備する」などです。

 このなかで、田んぼダムは、聞きなれない言葉だと思います。新潟県などで取り組まれている、水田の畔を強化し、排水溝に特殊なせき板を設置して豪雨を迎え撃つのです。農家のみなさんのご理解とご協力がなくてはできませんが、通常の田んぼの水位より10センチ高く水を貯めれば余分に100ミリの雨量をとどめられます。1反で約100トン。面積が広がれば大きな防災効果が見込めます。

 雨水タンクは、市内でも導入されている方もおられますが、流域全体で取り組めば大きな効果が見込まれます。この水は庭などで再利用できます。雨水浸透桝も、地下に水を涵養する受け皿で、地盤沈下の防止につながるといわれています。いずれも水路や河川への負荷を減らすことにつながります。

こうした総合的な治水対策を推進していくには、流域全域のみなさんのご理解、ご協力が必要です。1人の協力が全体の防災につながります。みんなの力で地域防災力を強化し、安全安心の輪を広げたいものです。

 

市長の部屋 令和3年5月号

「最大課題、人口減少にどう立ち向かうか」

 この3か月間あまり、改めて豊前市内を回って空き家が増えている実態に目が留まってしまいました。草に覆われた庭先、汚れがこびり付いた窓、止まっている電気メーター。

 この姿は当たり前のように各集落、町に広がっており、市役所では、空き家バンクでの登録可能物件や撤去すべき危険家屋として「空き家対策」の対象と捉えています。でも、見方を変えれば、これは人口減少、高齢化の象徴です。人が住まなくなる、減っていくから空き家が増えているのです。

 人口が増えていた時代に相次いで建設された公共施設も人口規模に見合った施設として整理再編しなければなりません。老朽化する、維持管理が難しくなってきた地区の施設をどうするのか。地域の方々の理解をいただきながら方向を決めていかねばなりません。

 放っておけば、使われない、使う頻度の少ない施設に効率の悪い支出となります。整理再編することで、維持管理にかかる経費を抑え、人口減で減少する税収分をカバーしなければなりません。

 人口減少が続くどこの自治体も「人口増を目指します」「これ以上減らさないように努めます」と対策を講じています。実は、豊前市で取り組んでいる政策は、その多くが人口増対策なのです。わかりやすくいうと、企業誘致は「働く場所」と「働く人」の増。空き家バンクや地域おこし協力隊も「移住人口」の増。教育環境の整備、先進地化は「孟母もうぼ 三遷さんせん の教え」のごとく。「安全安心」の医療、福祉の充実もしかり。

 と、同時に人口減少を前提とした上で地域づくりの方針を出さねばならない状況となっています。全国的な人口推計調査をもとに豊前市では2040年に2万人ほどになると予測されています。豊前市でも、どのように人口減少時代に備えるのか、立ち向かうのか、大きな課題。否、最大課題です。

 この課題解決の1つとしてこれから、県市長会や全国市長会で訴えを広げたいのは「第3子以降の子ども1人に国から1千万円の支給を」です。豊前市など基礎自治体では赤ちゃんがお母さんのお腹に宿ってから18歳になるまで政府発表で1千6百万円から1千8百万円が医療、福祉、教育などに必要といわれています。それが18歳になると大都市などに出ていく訳ですから大都市は元手いらずで成人人口が増えます。この人が働き、税金を納めるなら65歳までに平均1千万円と試算されています。この税金を豊前市に納めてくれたら、です。

 この不公平は地方交付税で均衡が保たれているとは考えられません。国に対して第3子以降の子に18歳まで、毎月にすると4万6千円余を支給すべきと訴えるのです。

 こうした仕事も市長の仕事です。地方から国を変えていく、大きな仕事です。しっかりと立ち向かっていきます。

 

市長の部屋 令和3年4月号

「海外からのサテライトキャンパス誘致を」「新年度関連予算スタート」

 骨格予算の新年度予算をはじめ、コロナワクチン接種関連予算や18歳以下の方にエール券(1万円分)を贈る子育て応援事業、1万円で千円分上乗せのプレミアム付エール券が買える生活応援券発行事業、新たな賑わいを創出するキッチンカー導入費等補助金などを盛り込んだ議案24件が3月議会で承認されました。命を守り、コロナ禍で疲弊する地元経済を支える各事業に職員一同、ワンチームで取り組む決意の新年度がスタートします。

 まもなく始まるコロナワクチンの集団接種で、どうすればいいのか、心配されている方も多いと思います。市として、来るべき接種の日に向けて万全の態勢で臨めるように3月25日に医師会や市老人クラブのみなさんのご協力のもと、接種予定会場の「多目的文化交流センター」を使って接種模擬訓練を実施しました。予診票の記入が1つのポイントになりそうです。病気で治療中の方やアレルギーをお持ちの方など、接種に不安のある方は、身近なかかりつけ医の先生などに事前にご相談ください。ワクチンの供給が始まり、すみやかに実施できて1日も早いコロナ感染の終息を祈るばかりです。

 こんな年度末でしたが、桜のつぼみが大きく膨らみ、開花の話題に包まれながら市内小中学校では卒業式。次のステップに胸膨らませる子供たちの涙と笑顔に感動された方も多かったはずです。卒業おめでとうございます!

 これに続く、桜のちょっといい話です。豊前市は令和の時代になって「花のまち豊前」事業を継続して取り組んでいます。今年は、JR宇島駅北側の県有地にも桜の植樹を行いました。市内に暮らす外国人ら約15人に参加をいただき「市内在住記念植樹」となりました。豊前市を第二の母国、ふるさととして彼らの胸に深く根張りし、満開の花の姿を帰国後も思い出してほしいものです。

 海外から働きに来てくれている外国人だけでなく、海外から豊前市に外国人の学生さんがやってくる時代が来るかもしれません。日本文化、日本語などを学ぶ大学と学生の誘致です。大学がやってきて日本人を学生募集するのではありません。豊前市に分校である「サテライトキャンパス」をつくるとのことです。

 以前から市長として外交ルートを通じていくつかの国に働きかけていた構想です。このほど、「うちの大学で豊前市に学生を送り込んでみたい。うまくいけば、将来は大学設置も検討したい」と親しくしているある外交官から大学名を出し、正規外交文書での申し出がありました。

 これは、文部科学省によれば「全国初の試み」とか。小規模から始めて、将来は規模を拡大し、豊前市が海外留学生受け入れのまちになる可能性を秘めています。初期にどこで、どれくらいの規模で実施するか、など受け皿づくりに取り組まねばなりません。学生が安心して過ごせる地域としての受け入れ力が試されそうです。

 人口減少がつづく小さな市でもできる国際的なまちづくり。大都市よりも海あり山あり、緑豊かな田園風景と、誇れる伝統文化が輝く豊前市は大きな可能性を秘めています。可能性にチャレンジする、夢を実現する豊前市を目指しましょう。

 

 

 

 

 

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