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  後藤 元秀 市長

 

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市長の部屋 平成29年3月

  「農林水産業と観光の振興」

 少子高齢化がじわじわと進む豊前市に、どのようにしたら活力が取り戻せるのか。日々悩む市長拝命いらいの4年間でした。人口減少をとどめる方策として、まず若い人たちを市外に流出させない手立てとしての雇用の場の確保ですが、現状は製造業が人手不足という皮肉な状況です。バイオマス発電所の誘致や自動車部品会社の拡張などで雇用のチャンスはさらに広がっています。もちろん、コンタクトセンター業務の富士通コミュニケーションズ社のような事務職といわれる仕事はまだまだ十分ではなく、この方面での雇用拡大が課題です。

 人口が少なくなるのに歯止めをかけるのは難しい仕事ですが、地方創生のなかで交流人口、つまり豊前市を訪ねてくる人を増やす目標をかかげています。たとえば観光客の誘致です。うみてらす豊前には連日多くの客がつめかけています。この方々に満足していただきながら、市内の他の名所探訪に誘うことができれば、と考えます。

 こうした観光面での活性化は、市だけでなく周辺の自治体とも連携して取り組む必要があります。緑多き山々や清流の河川、恵み豊かな里と海。伝統の修験や神楽、祇園まつりなど。誇れる宝満載の豊前ですが、周辺市町にも多くの観光資源が散在します。

 これらと連携して、ルートとして整備し、魅力を醸し出す努力が求められます。市だけでなく、周辺の町や市と協力して交流人口の受け皿をつくっていくのです。名所めぐりや美味しいもの食べ歩きだけでなく、恵まれた自然や伝統文化を地元の人たちと交流しながら体験する楽しさ、喜びを味わっていただくのもひとつです。

 こうした新たな魅力づくりを単独の市町ではなく、連帯して取り組もうという動きが起き始めました。行橋市と築上町、そして豊前市が核となり、周囲に呼びかけ、一次産業と観光の振興を目指すのです。「豊前海」という共通の海をかかえる市や町が「豊前海一粒かき」「豊前本ガニ」の成功例につづく特産品開発に挑戦するのです。とくに、一昔前まで大量生産されていたアサリの復活では、県水産海洋技術センター・豊前海研究所が特許を持つ「かぐや方式※」技術を駆使して稚貝を蓄養して安価で味の良いアサリ生産に結び付けることも考えられます。アサリの復活は吉富町までふくめ共通のテーマになります。

 このほかにもタイラギなど豊前海の水産資源の発掘、トリ貝の回復などがみられるところですが、荒れた漁場の改善や港湾の整備など大きな予算を伴う事業の推進は関係自治体だけでなく県のバックアップも重要です。県の力を引き出しながら京築全体が浮揚する、そんな取り組みが求められます。広域で県と結びながら次代を描く。一次産業と観光を同時に活性化する施策を展開する時代です。さらに頑張らねば、と決意しています。

 ※かぐや方式:塩ビ管の中にアサリ稚貝を入れて蓄養することで通常よりも早く成長させる装置

 

市長の部屋 平成29年2月

「古民家活用」

 穏やかな天気の中で酉の年が明けて早、一か月がたちました。元気にお過ごしでしょうか。寒の季節です、インフルエンザや風邪などに気を付けてください。

 地方創生の時代、ことしから市は古民家を活用した事業に本格的に取り組んでいます。公募により提供いただいた山内にある空き家となった民家の改修です。市外住民が田舎暮らしを体験、地域の住民と交流できる場づくりです。

 そんな事業がすべりだした新年早々、こんなやり方もあるのか、という稲作に取り組んでいる女性と出会いました。父親の出身地である栃木県の宇都宮市という大都会に住みながら、なんと、まったく農作経験もないのに県内にある父親の実家の農地で米作りを始めたのです。

 10代のころ、ご飯を食べるのが大好きで、将来はお米にかかわる仕事をしたいと念願していた「ごはん乙女」。その後、ごはん料理、和食とかかわってきて、いずれは自分で米作りを、と考えるように進化。ついに、25歳のときに父親の実家にたどり着きました。

 それからは体験のない農作に苦労しながら、今日まで、という経緯を想像したのですが、彼女は発想が違いました。おいしいお米づくりのレシピ(栽培法)をつくったのです。まず、土壌から、水から診断。適地を見つけるのに時間をかけ、その環境を活かして理想とするお米をつくってくれる農家を探しました。

 12年経った今では4町5反の農地で稲作を委託しています。もちろん有機肥料と地下水にこだわり一時は5町歩まで伸ばしたのですが、数量より品質の道へ転向しました。そして、栽培だけでなく米と米をゆっくり、10キロのお米を100分かけて米粒と米粒を摩擦させてゆっくり精米する循環式精米製法をとりいれるなど努力の結果、コシヒカリの特別栽培米「とち姫」が昨年産米の「2016年あなたが選ぶおいしい米コンテストin庄内町」金賞を獲得したそうです。

 このお米を、70センチ角の風呂敷に包みこんで販売するというこだわりが外国人にもうけて大人気の商品になっています。おどろきの発想力ではありませんか。

 彼女の目指している米づくりのように土壌や水の環境にこだわるなら、豊前市内でも可能性は大ではありませんか。清流や豊かな地下水、肥沃な土地が安全で美味しいお米を産んでくれます。

 市内では、農家自らが発想を変えることもできますし、彼女のような「そと者」を受け入れる場もあるでしょう。受け皿としての地域が見つかる可能性もあります。もちろん、一度も訪れたこともない方に彼女のような挑戦は出来ないでしょう。

 実は、豊前との縁が「ある」「ない」にかかわらず、豊前市をもっとよく知っていただくためにも、先述したように市は昨年、ご提供いただいた民家を地元のみなさまのご了解を得て改造中です。今年度内には完成予定です。多くの方々が各地から豊前市にやってきて田舎暮らしを、市の恵まれた自然環境と伝統文化を体験できる施設となる日がやってきます。この施設を活用して、豊前市に縁を結び、移り住んでくれる人であふれることを、旧正月の初夢とします。

 

平成29年 新年のあいさつ

「酉年に羽ばたく」

 新年、明けましておめでとうございます。輝かしい新春を、元気にお迎えのこととお慶び、お祝い申し上げます。年明け早々には、新成人のみなさまの成人式、豊前市消防団出初め式と新春を飾る行事が予定されています。必ずやこの一年の良い出発となる事でしょう。

 新年ですから、ことしの抱負、夢をふくんで述べさせていただきます。ここに書かれたことがすべて実現できるとか、決まったことではありません。市長は市行政の責任者ですが、ひとりの政治家でもあります。豊前市が「こうあったらいいな」「こんなこと出来たらいいな」など、夢を語るのも大切だと思っています。

 まず、地方創生の時代をどのように切り抜けていくのか。過疎化する地方共通のテーマ。「自力で、さらに国の支援を受けて人口を増やしていくのが地方の当然の目標だった時代」から「止まらない人口減少を予測しながら、備えをしていく時代」に方向転換するのが地方創生の基本理念にあります。

 全国の多くの地方自治体が高齢化と人口減少に歯止めがかからないなか、市長拝命いらい取り組んできたのが、「生涯現役社会づくり」でした。高齢化は問題ではなく、健康寿命を伸ばして、自宅に閉じこもらずに社会性をもち、活動する生涯現役の市民増を目指すものです。行政が取り組むのは、活躍する舞台と現役期間を支える健康寿命の長期化です。

 その具体策のひとつで、在宅高齢者を対象にした口腔ケア事業は九州歯科大学と地元の歯科医師会の先生方を中核に市内展開しており、今年度が2年目になります。専門家の定期的なケアを受けられた方々の中ではっきりとその効果が見られた方もいらっしゃいます。健康づくりは長い年月かけて、その取り組んだ成果が見られるようになります。地道に一歩ずつ進み、広げていくしかありません。とくに口腔ケアを小学校などの子供たちや、市内企業の従業員のみなさんに健康管理対策のひとつとして取り入れていただけるように頑張りたいと思います。

 市長拝命いらい、九州高圧コンクリート工業さんの遊休地活用対策として新たな企業誘致にとりくんできましたが、ようやく昨年秋に、東証一部上場企業イーレックス社を中核とするバイオマス発電企業が立地決定。ことしから本格的に動き出し、槌音が聞かれることになるでしょう。「未来につなぐ電源のまち宣言・多様化するエネルギーを活かした循環型社会づくり」をかかげる豊前市にふさわしい企業の進出です。

 完成すれば、規模で国内最大級の7万5千kw。再生可能エネルギーが各地に送られます。海外から輸入する木質原料を燃やす、環境にやさしい再生可能エネルギーが豊前市から送電されます。総投資額約250億円は、市内の雇用拡大を生じ、と経済波及効果が期待できます。経済活性の牽引車になっていただけるように市としても支援していかねばなりません。

 このほか、昨年3月に国の重要無形民俗文化財指定された豊前神楽の中心的な存在である豊前の伝統芸能、文化を力強く発信していきます。昨年6月オープンしたうみてらす豊前には市外から多くのお客様が新鮮で、旬な、美味な魚介類を求めて足を運んでくれています。この流れを大きく、太くして地域活性につなげていかねばなりません。東九州自動車道の開通で250万人ともいわれる福岡都市圏をはじめ、北九州や大分圏域の消費者の眼を、脚を、うみてらすに向けてもらえるように魅力アップに努めていかねばなりません。

 森林セラピー基地としての癒しも大きな豊前の魅力です。恵まれた自然や神楽、祇園などの伝統文化を、より多くの人たちに知っていただきたい。さらに美味しい豊前の食材と温かい豊かな人情と触れ合っていただきたい。こうした資源を活かして交流人口の増大を図り、豊前市を元気にしていきたいものです。春にもこの拠点となる古民家整備ができる予定です。

 また、これまで北九州市など県内4ヶ所のパスポートセンターまで出向かなければならなかった旅券取得が今年の四月から、県下小規模自治体で初となるパスポート発給事務が市役所で開始されます。利便性が高まります。

 まだまだたくさん、もっと大きな夢も語りたいところですが、語った夢を実現できるように精進、努力していきます。酉年にちなんで羽ばたきましょう。

 

市長の部屋 平成28年12月

「祝、釜井前市長に旭日中綬賞」

 この秋の叙勲で釜井健介前市長が旭日中綬賞を受章されました。4期16年の市長任期をつとめられ、全国市長会の副会長も兼任された実績が認められました。市としても誇りであり、嬉しい限りです。心から、お慶びお祝い申し上げます。これからも健康に留意され、我われをご指導くださいますようにお願いいたします。

「ユネスコ無形文化遺産登録にむけ」
「九州の神楽ネットワーク協議会結成」

 ことし3月に国の重要無形民俗文化財に指定された豊前市の6神楽団体を含む福岡県、大分県の15団体で構成する豊前神楽保存連合会が、九州各地の重要無形民俗文化財指定を受けている9神楽保存会などと「九州の神楽ネットワーク協議会」(以下「協議会」)を結成。ユネスコの無形文化遺産申請に向けて動き出しました。

 参加した団体は、京築神楽として活躍する豊前神楽をはじめ、長崎県が壱岐、平戸、五島。大分県が御嶽(おんだけ)と熊本県が球磨。宮崎県が銀鏡(しろみ)、高千穂、椎葉、高原の神舞の各団体です。

 協議会は11月5日、豊前神楽保存連合会代表ら約40人が宮崎県の高千穂町で初会合を開き、会長に高千穂神社の後藤俊彦宮司を選出。事務局は宮崎県教育庁・文化財課におきます。

 ユネスコの無形文化遺産保護条約は条約加盟の170か国にのこる無形文化遺産を保護し、重要性に関する意識の向上などを目的に2006年に発効。日本では、2008年に能楽、人形浄瑠璃と歌舞伎が登録されたのを皮切りに、2013年に和食が、2014年には和紙が登録されています。

 登録には、まず文化庁がユネスコに提案する案件として認めなければなりません。協議会として地元の各団体が組織を維持、発展させながら文化庁への働きかけをしていく必要があります。文化庁としては、神楽は全国的に広げて申請する方向のようです。文化庁の提案案件、ユネスコへの登録までは高いハードルを越えなければなりません。豊前神楽がユネスコ無形文化遺産に登録される日まで、力を合わせて努力していきましょう。

「海の漁師目指して、地域おこし協力隊員に」

 福岡市で歯科技工士をしていた今智彦さん(40歳)が、豊前市の地域おこし協力隊員として11月1日に赴任しました。奥さんと一緒に宇島に居を構え、当初は、うみてらす豊前で働きながら3年後までにカキ漁師として独立を目指す、とのことです。

 都会で専門職に就き生活していた今さんは、若いころから農業や漁業に関心があり、県関係者に豊前市を紹介されて転身を決意したそうです。豊前での夢が実現できるように頑張ってください。応援します。

市長の部屋 平成28年11月 

 男性71歳、女性74歳が平均――10月8日に九州歯科大学で行われた口腔保健・健康長寿推進センター開所記念式典で来賓の小川洋知事(山崎副知事代理)から紹介された数字です。平均寿命なら男性80.79歳、女性87.05歳(平成27年)なのに、と思いますが、紹介された数字は健康寿命。つまり、健康で暮らせている平均年数だったのです。男女のそれぞれの差は、医療や介護の世話にならなければ暮らしていけない期間です。実は、この時期を短くすることが健康寿命を延ばすことになります。

 九歯大・豊前市では健康寿命を延ばすには口腔ケアが大切だとし、豊前築上歯科医師会などと連携して在宅高齢者を中心にした訪問事業を展開しています。2年目になりますが、歯の磨き方だけでなく、口腔内の衛生、歯と歯茎、舌、喉の機能保全から全身の筋肉量などを歯科の専門家チームで個別指導しています。これらのデータを国民健康保険、後期高齢者医療のレセプト(診療報酬や薬剤報酬、訪問看護療養費の明細書)とともに専用のコンピューターで管理し、その情報を九歯大で解析。口腔機能の低下や疾患がつぎの全身の病気にどのようにつながるか、などを推測して予防、長寿につなげようというものです。

 高齢者の場合、口腔機能の低下で摂食嚥下(食べ物を口に取り込み、胃袋まで通す)障害から栄養低下、飲み込み違いによる肺炎や窒息を引き起こす危険性が高くなります。血液をサラサラにする薬を服用している方も多く、抜歯などをすると出血が止まらなくなり生命の危険にさらされることがあります。

九歯大は、このような高齢者が増加傾向にある時代に合わせ、専門の教育を受けた開業している歯科医師を育成する機関として全国に先駆けて口腔保健・健康長寿推進センターを開設したということです。頼もしいセンターが身近にできたことを歓迎します。

 開所記念式典に来賓として出席された厚生労働省の田口円裕歯科保健課長は、「医療・介護サービスの提供体制の総合的整備をとおして地域包括ケアシステムの構築を進めている」「健康で質の高い生活を営む上で、歯と口腔の機能は重要な役割を担っている」としたうえで「歯科医師の役割は極めて重要」と明言。「口腔保健・健康長寿推進センターに関しては、国においても大変注目しています」と挨拶されました。

 式典終了後、田口課長さんに、豊前市での「生涯現役社会づくり」と「口腔ケア事業」の取り組みについて見解を聞いたところ「施設など限定されたところでの取り組みは行われて、成果も見られます」「大学、地元歯科医師会などと連携した地域で取り組んでいる例はあまり存じ上げませんが、国の助成制度も活用して成功するように頑張ってほしい」「口腔から全身の健康につながる事業です。短期で効果がみられるところもあるでしょうが、息の長い取り組みです。応援します」と語っていただきました。

 健康で長生きできる年数を伸ばすことは幸せを伸ばすことになります。多くの市民のみなさんの参加ができるように取り組んでいく覚悟です。

市長の部屋 平成28年10月 

「普通会計で支えてきた事業特別会計の見直しを」

 「身の丈に合った行政運営を」「公営企業など経営効率化を」―9月議会で、市の監査委員から27年度の普通会計決算をもとに財政運営に関してこんな指摘を受けました。市の財政健全化の大きな指標である経常収支比率が26年度の95.8%から94.3%に少しだけ改善されたとはいえ、予算の中で人件費や扶助費など使い道が決められた部分を示すこの比率が依然として高止まりしている実態に警鐘を鳴らされました。

 具体的には、当初予算から組み入れられている財政調整基金(一般家庭では預貯金)を取り崩した予算編成を歳出過多とし、結果的に当年度は取り崩しなし、とした財政当局の頑張りは評価していただいたものの「身の丈を守り、健全財政を維持して住民の福祉向上に最大の効果をあげて」と求められました。

 さらに、普通会計外である「水道」「公共下水道」「農業集落排水施設」「東部地区工業用水道」事業(公営企業)会計ではいずれも、主たる業務活動から生じる「営業収支」が赤字で「入ってきた料金収入などでかかった経費が回収できていない」経営をずっと続けている。民間とは単純に比較できないものの、「本来、独立採算が原則で補助金など営業外収入に大きく依存している」「徹底した歳出の削減、新規の加入促進など努力しているが、根本的な改善には至っていない」と指摘されました。

 そのうえで、「し尿など一部事務組合および、近隣自治体や水道企業団との有機的連携、公共下水道と農業集落排水との統合など早急に実現させ市民の生活に欠くことのできない、これらのサービスを安定的に持続提供できるように努めて」と提言されました。監査委員のご意見で普通会計から補助金で支えてきた団体、組織にも節減の方策を講じるように求められました。この要請にこたえるには、大胆な構造的、組織的見直しときめ細かい、市民協働の取り組みが必要です。この削減が、次世代のために必要であると認識し、市民のみなさまにご理解とご協力を求めていくとともに汗を流す覚悟です。

 最後に9月議会・決算特別委員会で公表した「貸借対照表(バランスシート)」「行政コスト計算書」「純資産変動計算書」「資金収支計算書」の財務4表(総務省の基準に基づいて作成)から少し、紹介します。

 普通会計の貸借対照表に発表された、市の資産(有形固定資産、売却可能資産、投資・出資金、基金、現金・預金など)と、負債(地方債、長期未払金、退職手当引当金、翌年度償還予定地方債など)は平成26年度末の時点で、資産額463億6千1百万円余。負債額131億7千3百万円余となっています。これを人口(2万6千740人平成27年3月31日現在)で割ると、1人あたりは資産額173万円余、負債額49万円余となり、純資産額は124万円余となります。

 行政コストは、人件費など人にかかる費用16億9千万円余。物件費や維持補修費、減価償却費など物にかかる費用27億6千6百万円余。社会保障給付、補助金など移転支出的費用58億4千1百万円余。その他を含む経常行政コストから使用料・手数料などを差し引いた純経常行政コストは99億7千4百万円余となっています。

市長の部屋 平成28年9月

「漁港から広がる、うみてらす効果」

 リオ五輪、高校野球の甲子園が終り、雨から見放された熱い、暑い8月がいきました。まだまだ猛暑がつづきそうですが、秋はやってくるのでしょうか。

 思い起こせば、雨のない八屋祇園の初夏。梅雨は一転して豪雨。明けと同時に、記憶にないほどの、体温に近い気温の猛暑日が続きました。

 そんな中、4月24日には東九州自動車道が開通。直前に熊本大地震が発生し、開通記念行事自粛の幕開けでした。そして「開通すれば、豊前は通り抜けされるのではないか」との大きな危惧は的中してしまいました。

 的中の代表例。道の駅「おこしかけ」について、新聞各紙は「前年に比べて30%超の減収」と、過激に表現しました。なぜ過激か、といえば、前年は築上町の椎田南ICと豊前IC間7.2kmが未開通のため、この地域を通過する全車両が豊前市内を通らなければならなかったため、おこしかけの来客数、売り上げとも過去最高だったのです。最高の条件時の数字と、開通と大地震の余波を受けた過去にない減収の、両極の数字を比べて「こんなにひどい」とは、です。

 こんなときに、オープンしたのが「うみてらす豊前」。6月7日以来、連日行列ができる盛況。お盆の13日までの来客数は約3万組にも上ります。これまで豊前市と縁の薄かった福岡都市圏や筑後地区、そして佐賀や熊本、さらに広島や大分市のみなさんまでが「うみてらす」へ車を走らせています。

 おかげで客足が遠のいていた「おこしかけ」も波及効果か、復活の兆しが見えているようです。これまで豊前市と縁が薄かった遠来の客層です。時間距離が短縮される高速開通効果と言えるかもしれません。もちろん、これまで北九州市や筑豊から一般道で来ていただいていたみなさんも増加傾向にあります。「いつまで続くか」と懸念はぬぐえませんが、みんなの知恵と力を合わせて続くように頑張らねばなりません。

 もうひとつ、「うみてらす」で変わってきたと、言われているのが漁師さんたちです。土曜日が休漁日でしたが、開店以来、これを返上。「つめかけるお客さんに、地元自慢の海の幸を届けたい、喜んでもらいたい」と沖に出ています。豊かな海ならではで、盛夏のころの悩みである赤潮が発生すると、「漁にならない」とあきらめて出漁しないのが当たり前だった漁師さんたちが、「待っているお客がいる」と、魚が避難した赤潮のない沖の海域まで出かけて頑張っています。

 また、「うみてらす」で働く人たちも多くなりました。10代から80代まで50人を超す雇用を生み出すなど、多くの効果が見えています。地方創生にかかる一次産業の振興の一環として、まずは、漁業振興に集中的に投資(総事業費のおおよそ半分は国等の補助)したことによる、薄く広くの「ばらまき」では出にくい効果ではないでしょうか。地域おこしにつながる税の使い方だと思います。

 もうすぐ、秋の使者でもあるガザミ(ワタリガニ)の身がつまり、美味になってきます。このような秋の実り、おいしさに魅かれて豊前市を目的地にするお客さんが増えつづけるように期待したいものです。

 

市長の部屋 平成28年8月

「ゴミ分類で資源化、草の焼却処分見直しへ」

 ゴミの減量が大きな課題となっています。この欄でもことし2月号で吉富、上毛両町と運営する能徳工業団地にある「豊前市外二町清掃施設組合」で、年間約1万3千トンものゴミを処分するのに年間4億円超のお金をかけている実情を紹介してきました。ゴミを分類して減らし、経費を節減し、出てくる焼却灰も減らさなければ、灰を最終処分している上毛町の埋め立て場が5年ももちません。

 市政懇談会でも、このゴミを減量する必要性を市民のみなさまに訴えてきましたが、そのなかで実にもっともなご意見をいただきました。

 「市はこれまで、指定されたゴミ袋になんでも入れていい、としてきたではないか」「これまでの方針をいつ変えたのだ」とのお声でした。その通りです。市民のみなさまに、これからの方針を、どのように説明するのか、理解していただくのか、大事なところです。

 9年前、清掃施設組合にリサイクルセンターが整備されたとき、それまで各家庭、事業所からは18分類して出してもらうことになっていたゴミ出しを、リサイクルセンターで、カン・ペット・ビン等の分別を行えるようになったため「一緒に出してよい」という現在の方式に転換した経緯があります。リサイクルセンターで人手をかけて一括分類した方が、市民のみなさまへの負担が少なくなると同時に効率的との判断があったと考えられます。

 ところが、「なんでも楽に処分できる」ことからゴミの減量が一向に進まず、ダイオキシン問題で草木も燃やしてはいけない、という環境施策からも膨大な草木が焼却施設に集まってきました。毎年5月から10月までは日量約90トンの焼却能力ある窯の隙間ができた分、草を満杯まで投入するため、窯の中の耐火煉瓦などに大きな負担がかかっています。処理量の約1割出る灰の量も膨大となるうえ、焼却費用は1トン当たり人件費を含めて約1万9千円にもなります。草を焼くのに、です。もったいない。

 フル稼働する施設の運営費がかさみ、排出される焼却灰は最終処分場を満杯へと急進しています。現状で、新たな最終処分場を5年ほどでつくることは不可能です。灰の量を減らして処分場を延命 するしか先は見えません。上毛町のみなさんにも迷惑をかけ続けていることを考えますと、申し訳ない思いです。

 そこで、施設を運営する組合の理事会(3市町長で構成)で今年度4月に「3市町で足並みをそろえてゴミの減量に取り組むために、施設と担当者レベルの協議を開始する」など対策に乗り出したところです。市と町が共通の認識で、減量作戦に乗り出そうとしています。

 特に、ごみの分類と雑草の焼却量を減らすことは急務です。ゴミを分類して資源化し、ボリュームで圧倒している草を別の方法で処分しなければなりません。草は焼却炉の寿命を縮めメンテナンス費を押し上げ、同時に大量の灰となり、灰埋め立て場の寿命も縮めています。

 ゴミを分類して資源化、減量化して焼却施設の延命のために市民のみなさまの力を貸していただかなければなりません。市民のみなさまのご理解、お力添えをいただくためにも現在、分類や草の自家処理の方法について地区常会等でもわかりやすくお知らせできるよう準備をすすめているところです。

 

市長の部屋 平成28年7月

 うみてらす豊前が6月7日、豊前市・宇島漁港そばにオープンしました。小川知事、中尾県議会議長をはじめ多くの来賓出席のもと盛大に式典、テープカットができました。豊築漁協など多くの関係者のご尽力に心から感謝申し上げます。

 魚価の低迷、資源減少、後継者不足など厳しい環境にある地域漁業の現状に苦しむ漁家のみなさんが「獲った魚介の価格を自らが付けることができる」「豊漁の魚介を加工して付加価値をつけることができる」「直接、お客さまをむかえて料理をふるまう場所の整備」などをめざして市が建設した施設ですが、経営を同漁協に管理委託(指定管理)しています。

 水産の1次、2次、3次を合わせた施設を市が建設。漁師さんが、運営にかかわることで特色をもち、新鮮で美味な海産物を提供でき、漁師さんたちの所得向上と、前向きな笑顔を取り戻したいのが狙いです。

 1階には、水揚げしたばかりの魚を水槽にいれて活きたまま販売し漁師さんや奥さんが注文に応じてさばいてくれます。もちろん、切り身、刺身などの加工品もずらり。同時に地元の農畜産物やお菓子なども並ぶ「四季旬海」があり、大人気です。

 同じフロアにガラス窓に仕切られた加工室があり、ここでは漁家の奥さんたちなどが注文された魚を調理してくれるほか、市内の直売所などの売り場に並べる惣菜や加工品をつくります。将来的には、学校給食に提供する魚料理ができればと願っています。

 2階には、大人気の漁師食堂「うのしま豊築丸」が移転リニューアルしており、豊前海のブランド産品となっている「豊前本ガニ」「豊前海一粒かき」や旬のコショウダイ(コタイ)、ハモ、海藻のアカモクなど四季折々の魚介を食べることができます。

 なんといっても2階のテラスから眺めることができる180度広がる豊前海の眺望、眼下に接することができる漁船が並ぶ港は近郊ではなかなか得られない絶景です。「うみてらす」の名前の由来でもあるこのテラスにぜひ立ってみてほしいものです。

 大きな特長は、隣接する県の豊前海研究所の協力をえて魚介類や漁師さんたちの仕事などを直接学ぶことができる事です。海の食育の場としても活かせるように、と準備しています。落ち着いて運営できる時期には、映像と解説を通してわかりやすく知ることができますので、バスを仕立てて「海をテーマの生涯学習」を楽しんでいただきたいと思います。

 開所いらい、さばききれないお客様が押しかけてきてくれています。場所がわかりにくい、広いはずの駐車場は満杯、注文したメニューは2時間以上待たねばならない、期待した魚が売り切れているなどお客様の苦情が多いのも事実です。開店を前に準備してきたはずですが、期待に応えきれていないことをお詫びする次第です。

 でも、多くの元気出る声も届き、スタッフの疲れをいやしてくれています。「今まで見たことない景観に感激」「食べられなかったけど、スタッフのアドバイスで買ったコタイがおいしかった」「スタッフの親切な対応、一生懸命ぶりがよかった」など。漁師さんたちからも「遠くから来てくれたお客さんが喜んで買ってくれた」「もっと漁に出て魚を獲っておいでと、妻にせかされた」など前向きに取り組もうという姿が感じられています。

 まだまだ、スタートしたばかりの「うみてらす」ですが、3億円を超す税金を投資することでご了承いただいた市議会の期待に応え、東九州自動車道開通の時代に、いままで豊前市を知らなかったみなさんが豊前市を目的地として選んでくださるように、みんなで頑張っていきたいと考えています。ぜひ、ご利用ください。

 

市長の部屋 平成28年6月

 50人という死者・行方不明者、一時は18万人もの避難者を生んだ熊本地震。被災直後から市の呼びかけに多くの市民のみなさまが応えて頂き、たくさんの支援物資を寄贈くださいました。その量は2トントラック4台、10トントラック1台、バス1台分です。このほか、京築消防本部は直後から救急車で救急隊員を、被災建築物の確認に市の技術職員を派遣しました。自主的に、炊き出しなどボランティア活動をされた方も多かったと聞いています。

 多くのご協力で赤ちゃんを抱えた家族を市営住宅に受け入れ、自主避難先にペレットストーブ10基を送っています。本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。まだまだ、復興への道は始まったばかりです。これからもお力を貸しください。市として今後もできる限りの支援を続けます。

 こんな中ですが、沖縄で開催された九州市長会に出席しました。自治行政上の共通する課題を討議し、解決に向けて国の法的整備などを求める要望を九州118市(残念ながら、熊本県の6市と他県の4市は欠席)が一堂に集まって決議する場です。総意として来月の全国市長会に提案。同時に、熊本大震災の復興復旧対応も議決しました。

 市長会の議案審議中、熊本地震で庁舎が崩壊する姿をテレビで実況され大きな波紋を呼んだ宇土市を激励訪問した宮崎県西都市の市長から、宇土市長の言葉として「耐震、建替えは学校や福祉施設などを優先。市庁舎の改築は後回し」。耐用年数がきているのを認識しながら「現状放置してきた」ことへの後悔。被災後、「幸いにも体育館が使用できたもののコンピューターが危険な市庁舎から持ち出せず、事務処理機能がマヒして被災者救済の拠点、復旧、復興の司令塔としての大きな役割をしっかり果たせない」という無念が伝えられました。

 このうえで、全国市長会を通して国に、「合併した自治体は合併特例債で庁舎建替えができるが、合併できなかった自治体のひとつである宇土市などは財源が乏しく大災害に対処できない。被災した庁舎の更新、新増築にしか使えない緊急防災・減災事業債を、被災しない自治体でもつかえるように見直しを」と訴えました。西都市も宇土市同様に平成の大合併を逃した市です。

 今回の大地震で震源地に近い豊前市は、被害が最小限の地のひとつです。しかし、自然災害は地震だけでなく、いつ、どんな形で襲ってくるかわかりません。そのとき、どんな体制で迎え撃てるか。市民の安全確保に最大限対処できるか。建物としてのハード拠点、人材とコンピューターの機能を失わないソフトの両面での備えが大切です。「お金がない」「市役所は最後まで我慢」ということで着手してこなかった市役所の耐震改修や設置直後から不評の防災無線に加えて個別受信機を各戸設置になど、早急に方針を打ち出さなければならない時を迎えています。

市長の部屋 平成28年5月

「小さな家畜フォーラム」

 地域コミュニティ(同じ地区に住んで利害を共にする人の集団)が疎遠になっている。高齢化で道路愛護参加者が減少傾向。耕作放棄地がなかなか減らない。農林業で鳥獣被害が増すばかり―これら悩み、問題を多くの地方都市がかかえています。利便性が高く省力・機械化、効率化、エネルギーの転換、スピード化、経済性を重視した近代化路線をながく突き進んできた私たちの周りで起きている問題ともいえます。

 少子高齢・人口減少、世帯分離の時代にあって、どうしたらこれらの問題を解決できるのか。もちろん、お金をかければ解消できる問題もありますが、限られた財政のなかで問題を解きほぐしていかなければならないのが現実です。

 では、どうすればいいのか。もしかしたら、前を向くだけでなく、たどってきた道を振り返ることも大事ではないでしょうか。歴史をたどると、教えられることもあるはずです。たとえば、経済的に豊かではなかったが、人々が協力しながら穏やかに心豊かに日々を刻み、ヤギやニワトリと共に暮らす景色が見えるかも知れません。

 そんな暮らしや地域を取り戻したら、もしかして今の多くの課題を少しだけでも解決してくれるかも、解決のヒントが得られるかも、と5月7日に市多目的文化交流センターで、「小さな家畜フォーラム」が、開催されます。県・畜産課の提案で私を会長にフォーラム実行委員会を結成して開催の準備を進めています。

 フォーラムは午後1時から開会のあいさつのあと、鹿児島大学農学部の中西良孝教授が「山羊の魅力」と題して基調講演。同2時から地元の尾家光将さん(恵光園・ワークセンター栃)桂川町の古野久美子さん(合鴨家族古野農場)筑紫野市の柳瀬浩司さん(日本エコシステム)が、それぞれ放牧ブタ、アイガモ、エミューを飼育する事例を発表します。

 たとえば、石油や電気でうごく機械をつかって、人間が管理してきた農地や道路、公園などの雑草は、高齢化の進展で体力的、経費的にも維持に限界が近づいています。その結果、耕作放棄地や荒れ地が増えているのではないでしょうか。昔のように、ヤギやニワトリの力を借りて雑草を処理する、生えにくくする。

 小さな家畜に飼い主だけでなく、近くの人が集まる。きれいな生活空間や自然環境を取り戻し、そこに会話や交流が生まれて、地域のコミュニティがよみがえるきっかけとなる。足元でニワトリが動きまわり、遠くの田んぼの隅に草を食べるヤギがのどかな風景が見られる。もちろん家畜ならでは、肉や卵が活用できるのです。

 小さな動物では、家庭で飼われるペットの犬や猫が大きな存在となっています。家族の一員で、癒しの存在として認められ、大切にされています。小さな家畜も、そんな「戦力」になる可能性があるはずです。ぜひ、参加いただき、小さな家畜を見直すきっかけにしていただければ、と思います。入場無料です。

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 東九州自動車道の県内未開通路線だった椎田南IC―豊前IC間が4月24日開通しました。これまで必ず市内を通過しなければならなかった高速利用の自動車が市内を通らず、通過されてしまうことになりかねません。市が半分近くを出資する道の駅おこしかけの利用客が減少する懸念が大きく、何か手を打たねば、と開通3日前の21日に、おこしかけのシンボル大屋根の下に一夜にしてヨーロッパの町をつくりました。あっと驚くサプライズの町。高齢者の客層が主だったおこしかけに子どもや若い世代が集まってくれることが期待できます。一度お出かけください。

 

「平成28年度 施政方針」

 私にとりまして,本年は平成25年4月に就任して以来,市民の皆様方のご支援をいただき4年目を迎えることになります。この1期の総仕上げとして,これまでの経験を活かし,今後とも,激動する時代の流れを的確に捉え,課題解決に取り組むとともに,市民の皆様が夢を持てるように,未来の世代に繋げる豊かなまちづくりを推進してまいりたいと考えております。

 

 さて,本年1月4日の安倍総理大臣の年頭記者会見において,少子高齢化という長年の懸案に真正面から挑戦し,「戦後最大のGDP600兆円」,「希望出生率1.8」,「介護離職ゼロ」という大きな目標を掲げ,この3つの的に向かって新しい三本の矢を放ち,一億総活躍への挑戦を始めるとのご発言がありました。国においては,これまでの取組により,賃上げ率は二年連続で前年を上回る伸び,有効求人倍率は23年ぶりの高水準となるなど日本経済はデフレ脱却までもう一息のところまで来ており,全体として緩やかな回復基調にあるものの,一部に弱さもみられるところであり,引き続き機動的な経済財政運営を行っていく方向性を示しています。同時に,少子高齢化という構造的な問題があります。この約30年間,出生率は大幅に低下しており,高齢化率は着実に上昇し,2008年をピークに人口減少に転じております。こうした少子高齢化の進行が,労働供給の減少のみならず,将来の経済規模の縮小を招き,経済の持続可能性を危うくするという認識が,将来に対する不安・悲観へとつながっていると考えられます。それらに取り組むために,若者も高齢者も,女性も男性も,障害をお持ちの方々も,みんなが活躍できる社会,いわゆる一億総活躍社会を目指し,一人ひとりの個性と多様性が尊重され,家庭で,地域で,職場で,それぞれの希望がかない,それぞれの能力を発揮でき,それぞれが生きがいを感じることができる社会を創り,一人ひとりの希望を阻む,あらゆる制約を取り除き,活躍できる環境を整備するとしております。

 本市においても,国と歩調を合わせながら,市民の皆様方の理解と参画をいただき,各事業を着実に実行してまいりたいと考えています。

 

 ご案内のとおり,昨年は,豊前市が誕生し,市制施行60周年という大きな節目となり,5月に60周年記念式典,ジョージ・アリヨシ元ハワイ州知事ご夫妻をお迎えして,「おかげさまで」と題して記念講演をしていただきました。その答礼として,11月に文化交流訪問団をハワイに派遣し,神楽・和太鼓・ジャズオーケストラの共演により,文化活動で互いの心が通じ豊前市の持つ伝統文化の価値と育んだ文化の力の素晴しさと誇りを体感できました。今後の活動にどのように活かしていくかが課題となります。

 また,新しい風も吹き込んでいます。九州電力豊前発電所敷地には,世界最大の蓄電池施設が設置され,バイオマス発電所の建設計画も新聞報道されました。さらに,議会におきましても,「未来へつなぐ電源のまち宣言 ~多様化するエネルギーを活かした循環型社会づくり~」について,ご議決をいただきました。まさしく本市は,電源供給を担うまちとして,発展するとともに,発電事業は,先人達の大きな志とその努力により,近代化推進の原動力として地域において重要な役割を果たしてきました。一方で,東日本大震災以降,電力供給は,多様な電源による効率的なエネルギーの活用が求められ,特に再生可能エネルギーの活用は,今まさに求められる重要な政策であり,未来の子ども達へとつなぐ循環型社会づくりに必要不可欠な取り組みであります。今後は,動向を注視しながら,積極的に推進したいと考えています。

 次に,本年度の主要な取組について,ご説明申し上げます。

 

観光・産業の振興

 本市には,様々な地域資源があり,それらを活用することにより,観光振興を推進します。

 平成13年には,求菩提山が国の史跡指定,平成24年には,求菩提の伝統的な農村風景の希少価値が国から認められ,重要文化的景観の選定を受けました。さらに,平成26年には,山林のもつ優れた癒しの力が森林セラピー基地と認証され,他にはまれな心身ともに健康増進につながる魅力的な地域でもあります。

 さらに,求菩提温泉「卜仙の郷」,道の駅「豊前おこしかけ」,水産振興施設と連携して本市の魅力を発信し,観光客(交流人口)の増加を目指します。そのためにも,商工会議所など民間の協力を得ながら,観光協会にその推進役を担っていただく予定です。

 本年は,東九州自動車道豊前・椎田南間が開通しますが,本市にとっては,通過点にならないよう努力しなければなりません。この課題を克服するためには,道の駅は勿論ではありますが,水産振興施設のPRも重要であり,地域おこし協力隊を活用して,施設の運営・企画・情報発信等を行い,山海の幸を堪能しリフレッシュしてお帰りいただき,また豊前市を訪れたいというリピーターを増やしていきたいと考えています。

 次に,商業振興について,県の補助事業を活用して,商店街の魅力発信・情報発信を行い,PR活動をきっかけに来店機会の創出につなげる商店街活性化事業をさくら祭りに併せて支援するとともに,プレミアム商品券の発行を行いながら,消費喚起を促し,地域経済の活性化を図ってまいります。

 

教育の振興

 昨年は,東松島市に18名の中学生を派遣して,被災地体験学習を実施いたしました。生徒に,被災地の現状を体験してもらい,報告会では,「まだまだ復興は進んでいない」「学習を通して,人と人とが団結,協力しあうことは,大きな力や強さに変わることを改めて知ることができた」「今,自分たちに出来ることは何か」等様々な意見が出ました。百聞は一見にしかずで,やはり自分の目で被災地を見て,耳で地域の方の話を聞いて,肌で雰囲気を感じて,大変貴重な体験ができたと非常に喜んでおります。引き続き,本年は,昨年応募していただきながら参加できなかった小学生を対象に,被災地体験学習事業を実施し,現地で実際に被災した方々の話や建物などを見ることにより,今後の生活に少しでも役に立てばと考えています。

 環境整備につきましては,国の補助事業を活用して,八屋小学校・山田小学校・合岩小学校・八屋中学校において,体育館の天井等の改修工事を前倒しで行い,国が進める非構造部材の耐震対策と長寿命化を図り,防災対策を行ってまいります。

 また,大村小学校区における学童につきましては,他の小学校で実施されている放課後児童クラブとは異なりますが,放課後・夏休みなどに,子ども達の健全育成・安全確保を目的に大村すこやか子ども塾事業を行います。ただし,継続的・安定的な運営を確保するため,保護者・地域の方々・民間事業所が協力連携して,事業内容を企画・実施していく独自の運営形態を予定しています。地域の方のご協力・ご支援をよろしくお願いいたします。

 次に,児童の読書ばなれに歯止めをかけるため,一昨年より取り組んでおります読書リーダー養成講座を継続実施し,市立図書館と各学校の連携を深めてまいります。本年は新たに,家庭での読書「うちどく」を推進し,家庭における本を通した家族のコミュニケーションを図ります。具体的には,読み聞かせボランティアと学校司書が担当教諭と協議し,選んだ本を持ち帰り,家族で同じ本を読む・本の話をするといった各家庭に応じた時間を過ごし,その本を次の家庭へとリレーしていきます。リレー方式による本と感想等の情報交換を行い,家庭での読書を活発化させることにより,読書習慣の定着と「豊前市子ども読書推進計画」において目指す家庭・学校・地域における読書環境の充実に取り組みます。さらに,青豊高校との連携についても,検討してまいります。

 文化芸術につきましては,本年1月15日,豊前神楽が国の文化審議会において,重要無形民俗文化財とするよう答申されました。地域の誇るべき宝が国に認められ,多くの方々に神楽を見ていただきたいと思います。また,県指定無形民俗文化財である山田の感応楽について,地元から国指定への要望があり,重要な資料である由来書の所在も判明したため,経緯を踏まえて国に対し,国重要無形民俗文化財への指定に係る意見具申を行うため,国の補助事業を活用して学術的な調査を実施し,映像記録や調査報告書の取りまとめを行いたいと考えています。

 

医療・介護・福祉の分野でのきめ細かい行政サービス

 市長就任以来,掲げてまいりました「生涯現役社会づくり」については,昨年,在宅歯科訪問事業を実施しましたが,本年は蓄積されたものを疾病予防・健康増進につなげ,市民全体に広げたいと考えています。

 さらに,調理等が困難なため,食事を適切にとりにくい高齢者や障害をおもちの方々に対して,夕食の配食サービスを行うことで,食生活の改善及び健康増進を図っておりますが,本年は,十分な支援が受けられないことで,栄養面での健康保持が困難となる方に,配食サービスによる栄養改善の状態を,管理栄養士等の専門職員が必要に応じて,個別に確認・評価し,一人ひとりに応じた栄養指導・改善を行ってまいります。また,栄養改善と深く関係する口腔機能についても,状態の確認や適切な口腔ケアが出来るように指導を行い,関係機関と連携します。事業において,収集した情報は,今後の健康づくりに活用するため,在宅歯科訪問システムへ蓄積を行ってまいります。

 また,本年よりがん検診の受診料の見直しを行い,受診者の負担軽減を図るとともに,健康づくりカレンダーの充実など受診率の向上を目指し,早期発見・早期治療による重症化予防に努めます。そして,インフルエンザワクチン予防接種費用の助成を中学3年生まで拡充して,感染症予防と子育て世代の支援に努めます。

 次に,本年から2ヵ年の期間において,高齢者保健福祉計画を策定いたしますので,各計画との整合性をとりながら,高齢者の皆さんが住み慣れた地域で安心して暮らしていただけるよう福祉施策の推進を図ってまいります。

 さらに,ひとり親家庭等医療証と重度障害者医療証が,本年2月診療分から中津市でも一部使用可能となりました。これまで,福岡県外の受診時には患者負担金を支払い,市役所に申請のうえ後日払い戻しを受けていただいておりましたが,その手続きが省略されます。関係機関のご尽力を賜り心より感謝申し上げます。今後も引き続き協議を重ね,市民の方の利便性の向上を図ってまいりますので,ご理解とご協力をお願いします。

 そして,昨年より,小学生から中学生までの医療費助成の拡充を実施いたしましたが,本年も継続して,安心して子育てできる環境整備を行ってまいります。

 

人口減少に歯止めをかける対策

 首都圏をはじめとする地域からの移住希望者に対し,働きながら一定期間本市で居住することにより,就業・就農体験等をとおして豊前市の魅力や住みやすさ等を体験していただき,将来的には,本市への移住・定住の促進を図ります。また,活動状況と併せて移住希望者への情報提供として,市外の方から見た,感じた豊前市について,広く県外に情報発信を行っていただくことで全国各地から多くの定住者を 呼び込み,移住へと結びつけるトライアルワーキングステイ事業に取り組んでまいります。

 また,地域では空き家が増加傾向にあり,空き家バンク制度の運用でその活用を図っておりますが,その中には古民家もあり,外国人の方を対象としたロングステイのまちづくりを推進する上で,古民家の利活用についても検討してまいります。

 安全・安心なまちづくりについては,本年も,防災講演会を予定しております。昨年は,東松島市より元市民生活部長の大友氏を講師としてお招きし,東日本大震災の対応と復興のまちづくりについて講演をいただきました。災害に対する危機管理として,防災知識の普及・自主防災組織の育成強化等の重要性が示され,本市においても,防災に関する講演会や地震や津波を想定した防災訓練を継続実施することにより,市民の方々の防災意識を高め,いつ襲ってくるかもしれない災害に対応しうる備えを充実し,市民の生命を守るための災害対策の強化を図ってまいります。

 次に,本年4月より予定しております組織機構の改定につきましては,まちづくり課を商工課,観光物産課に分割し,都市整備係と建設課の住宅建築係を統合し,都市住宅課を新設して,東九州自動車道の開通やまち・ひと・しごと創生総合戦略に沿って,産業・雇用の創出,交流人口の拡大等推進体制の強化を図ってまいります。 また,総務課の人権啓発係と男女共同参画関連事業を統合し,人権男女共同参画室とすることにより,国の一億総活躍社会を実現するための推進体制を構築します。

 環境につきましては,パリ協定に基づくCO2削減対策として,市民の皆様にゴミの減量化・細分化にご協力していただき,リサイクルやリユースを推進することにより,経費削減に結び付け,循環型社会の構築を目指して,取り組みたいと考えています。

 市バス事業におきましては,平成27年度にデマンド交通の試験運行を予定しておりますので,試行期間の状況等を検証しながら,今後の本市の新たな公共交通サービスの検討を行い,利便性の向上と乗降客の増加につなげてまいります。

 以上,市政運営に関する私の所信並びに主要施策の概要について申し上げましたが,本年は,節目を迎えた新しい豊前市の第1歩目の年であり,本市が元気で輝き,また市勢がさらに好転し,活力あるまちになるため,豊前市の将来をしっかり見据えながら,取り組んでまいりますので,議員並びに市民の皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

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