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  後藤 元秀 市長

 

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市長の部屋 平成28年3月

「口腔ケア事業から見えた心身の健康維持」

  「生涯現役社会づくり」の主施策である口腔ケア。今年度取り組んだ在宅訪問口腔ケア事業が一段落しました。取り組みを終えた豊前築上歯科医師会は「個人差はありながら訪問するたびに笑顔が多くなる結果を多く確認できた」と、効果を実感。この事業は議会の承認を経たうえで新年度も深化、継続していきます。ケアを受けたい方は市の市民課に相談してください。

 この口腔ケア事業は、県の助成を受けて実施。豊前築上歯科医師会と九州歯科大学教授陣を中核に、在宅の高齢者合わせて61人を週一回から隔週に訪問、各人の健康状態に応じたケア、指導を行いました。まず、口の中をはじめ血液などを検査。例えば、口の中の細菌の量、舌圧、握力・体重などを記録。さらにふくらはぎの太さを計り栄養状態を診るほか、InBody(インボディ)という最新機器を使って水分、筋肉、たんぱく質、ミネラル、体脂肪などを各部位ごとに検査します。

 検査は同歯科医師会と九州歯科大学教授陣、そして管理栄養士、歯科衛生士さんでチームを組み、定期的に歯や歯茎のメンテナンス、口腔体操などをして、その時点での個人データを今回独自に開発したプログラムに入力。各人の口腔や心身の健康状態の変化を記録してきました。同歯科大の安細敏弘教授は「認知症が進行している方でしたが、歯科衛生士の定期指導で歯と口のメンテナンスを重ねたほか、家族のみなさんの支えでしょうか、3か月後にはご本人はずいぶん明るくお元気になられました」との印象も。今後は、蓄積された全データを同歯科大で分析。積み上げられたデータから読み取れる結果を次につなげていく計画です。

 豊前築上歯科医師会の筒井修一会長によれば「歯科では例のない規模の事業です。個人差はありますが、おおむねいい結果につながっています。今回得られたデータを健康長寿に活かしたい」と前向きです。事業に参加していただいたみなさんに感謝しています。歯や舌、口の中をきれいに、強くすれば心身の健康につながることが全国に先駆け豊前市で立証されようとしています。継続して取り組み、生涯現役を誰もが実感できる地域づくりをめざしてがんばります。

 

市長の部屋 平成28年2月

 「ゴミ分別で、CO2削減、温暖化防止へ」「国県から指導される前に」

 昨年末、フランスのパリで開かれた気候変動枠組締約国会議(コップ21)で世界196の国と地域が先進国、途上国の区別なく2020年から地球温暖化対策に取り組んでいくことを決めた「パリ協定」が採択されました。日本はCO2の排出量を2013年比で26%削減するという目標を表明しました。

 これをどのように具体的に実行、推進していくのか、国の、都道府県単位の目標、市町村ごとの目標、施策を打ち出さねばならない時がやってきます。国際間での取り決め、条約を国が持ち帰り、国から県へ、それを受けて市が取り組む構図です。国県から末端の自治体への下請け構図が見えてきます。こんな従来のやり方でいいのか。いわゆる「待ち」「受け」で、自主性のない末端自治体の姿勢でいいのか。と、考えています。

 本市でどのような総合施策を打ち出せるのか。詳細な事業を展開するべきなのか。地方創生の時代に「待ち」ではなく「攻め」に転換して、豊前ならではの施策を、国や県より早く提案、実現しなければならないのではないでしょうか。

 では、どうするのか。豊前市は、昨年の12月議会で「未来へつなぐ電源のまち宣言~多様化するエネルギーを活かした循環型社会づくり~」を議会で採択していただきました。石炭火力の時代を経て石油火力発電所が現存し、世界最大規模の蓄電装置も立地。多くの太陽光発電の場所をもつ市内に、近く木質バイオマス発電所が誕生する見通しです。

 この多様な発電、電源の地域にさらに小水力や風力、そしてバイオガス発電をそろえて「多様な発電のまち」を目指したいと思っています。こうして地下に埋蔵されている石油や石炭などを原料にする発電を少なくしてCO2発生を抑制する方向にすすめる。結果的に温暖化を防止する目的に近づくようにしなければなりません。

 たとえば、バイオガスの場合、多くはメタンガスを発生させ、そのガスをつかって発電するわけですが、メタンガスをつくるには有機物が必要です。原料の有機物を購入していては、もったいない。現在、市内でゴミとして排出されるなかに多くの有機物があります。代表例が、生ゴミです。

 各家庭などから出される生ゴミは市によって回収され、豊前市と吉富町、上毛町によって構成される清掃施設組合の焼却場で処分されています。燃やしてCO2をつくっています。この生ゴミを集めてタンクに入れ、産みだされるメタンガスで発電する。この電力をどのように利用するか。ゴミからとった「原料無料」の電力です。楽しみです。

 こんなゴミ利用を真剣に考えることによって、大きな変革が期待できます。現在、この清掃施設組合を運営するのにかけている年間約5億円の経費(豊前市で約2億5千万円)を減らす方策にもなる見通しもあります。

 年間総量約1万3千トンのゴミを集めて処分している施設組合ですが、このうち40%ほどが生ゴミ、紙おむつ類です。これらは金属、プラスチック類などがきちんと分別できていればそのままメタンガス発生につながります。10%ほどを占める剪定枝や青草。10%のなかの大半は青草ですがメタン発酵に使えます。

 こんな資源は、分別をしっかりしていなければ、利用できません。生ゴミのなかに金属、プラスチック類などが入れば、発酵がうまくいかず機械などを損傷することもあります。分別が必要です。分別さえすれば「ゴミが資源になります」。

 先進地の大木町では、ゴミを26品目に分別して回収し、ゴミを半減しています。半分の焼却となればCO2を半減できるわけです。豊前市でもやればできるのではないでしょうか。国や県から「指導」される前に動くことが大切です。地方創生の時代です。われわれで抱える悩みを、われわれが先に気づき対処する、解決策を出していく。例えば、ゴミの徹底分別。そんな挑戦をしていかなければ、子どもたちや孫たちに可能性ある豊前市をバトンタッチできません。

 

市長の部屋 平成28年1月

豊前市に仕事あります。帰したい、帰りたい方、相談ください。 

 新年あけましておめでとうございます。

 市制施行60周年という大きな節目の昨年は、5月に60周年記念式典。ジョージ・アリヨシ元ハワイ州知事ご夫妻をお迎えし  て、名誉市民称号を差し上げ、元知事には胸にその章をさげ、記念講演「おかげさまで」をしていただきました。

 答礼の形での11月の文化交流訪問団ハワイ派遣は、豊前の神楽、和太鼓とジャズオーケストラの共演が、3か所の舞台でスタンディングオベーション(立ち上がって拍手する最高の反応)という大成果。文化活動で互いの心が伝わった瞬間を体感できました。「豊前はすごい!」を出演者が実感でき、これまでの活動に自信と誇りを持てたことが何よりでした。今後、このステージをどのように活かしていくか。大きな課題であり、夢です。

 そして、団員が2kgずつ持ち込んだ豊前産米をホノルル総領事館で炊いていただき、女性団員が結んだ400個のオニギリは、現地の日系人を中心に大反響。豊前米の美味しさを伝えることができました。豊前産の黒米は、アリヨシ元知事の奥様ジーンさんが大ファンで、「豊前のお米をハワイで食べたい」との希望も聞いています。豊前のおいしいものをハワイに売り込むことも、テーマとして浮かんでいます。

 昨年後半から豊前市に元気な風が吹き込んでいます。九州電力の豊前発電所敷地に世界最大30万kwの蓄電池施設が設置決定(年内にほぼ完成)。その後、約7万5千kwの国内最大バイオマス発電所進出検討が新聞発表されました。このほかにも自動車関係、IT通信関連の事業所などが豊前市進出の動きを見せ、地場企業の拡張なども具体化しています。こうした勢いを新年はもっと大きく、確実なものにしていかねばなりません。

 勢いをさらに大きくしていくために、いま求められているのが人材です。全国的に景気が回復基調にあるのか、人手不足が広がっています。豊前市内の事業所でも同じです。このところお会いする企業の方々から、昨年ひらかれた東京での県主催企業等立地セミナーでも「人材が欲しい」「人の集めやすいところに進出したい」という切実な訴えが聴かれました。

 これまで「豊前市内には就職先がないから」などの理由で市外に「とりあえず進学」「仕方なく就職」した若い世代の方々が多かったのではないでしょうか。でも、自然豊かで美味なる農林水産物に恵まれ、神楽や祇園などの幼いころから身に沁みついた祭事がある「豊前に戻りたい、ふるさとで暮らしたい」「仕事さえあれば、すぐにでも」などの話。さらに「都会では給料は少し高いけど、家賃や食費、交通費には金がかかる」「自分で使えるお金と時間に制限が多い」など、「こんなはずではなかった」との声が耳に届いています。

 いま、豊前市の立地企業や進出予定企業は人材を求めています。正社員への道も大きく開け、最短の時代になっているようです。「子供を帰したいけど、どうしたらいいか」「同級生、友人が豊前で暮らしたいと言っている」。もちろん、豊前市が故郷ではないが「豊前のような環境で暮らしたい」との思いをお持ちの方、お聞きの方は、ぜひ市役所にご相談ください。

 年賀状の季節です。「豊前市で仕事するなら、相談できるよ」とのメッセージを添えてください。年末年始に帰省された方に一声「帰ってこんね。仕事はいろいろあるようだよ」「市役所に聞いてみませんか」と、お声掛けください。お願いいたします。市役所はハローワーク豊前出張所と連携し、受け皿となる企業についての情報や手続きなどアドバイスできます。もちろん、個人の秘密は守ります。担当窓口は市役所・まちづくり課です。

 この1年が、市民のみなさまにとって元気で輝く年に、市勢がさらに好転し、活力ある地域になりますことを祈念申し上げ、年頭のご挨拶といたします。

 

市長の部屋 平成27年12月

「地方で支えあう創生に前向き」

 東日本大震災以来支援を通してお付き合いしている宮城県・東松島市から、今年の第17回豊築漁協さかな祭に、宮城産のカキが300キロも送られてきました。地元豊築産カキは、十分な実入りを確保するために、12月末からしか出荷できないので、宮城産かきを送り込んでいただきました。東松島のみなさん、有難うございました。

 今、建設中の水産振興施設は、新鮮で豊かな豊前海の幸を皆さまに提供して喜んで頂くことにより、漁家の所得向上や漁港の活性化を目指すほかに、観光振興や地域間交流の拠点となることが必要です。

 今回の東松島市からの応援は、一度きりではなく、水産振興施設が来年度オープンしてからも続けていただきたいと考えています。カキだけでなくサケやサンマ、スケトウダラにホタテガイやホヤなど三陸の沖から豊富な魚介が水揚げされます。これらを旬の時期に送っていただき、豊前海にはない美味しいものを並べたいと思っています。あわせて東松島市の文化や観光なども紹介する計画です。もちろん、先方にない豊前海の旬も、送付できるように、観光情報も届けられる関係を模索します。

 併せて東松島市の文化や観光なども紹介する計画です。もちろん、先方にない豊前海の旬も、送付できるように、観光情報も届けられる関係を模索します。

 こんな港と港、地域と地域の連携が豊前市と全国他の市町とできたらいいな、と願っています。このことで、豊前市に暮らしながら友好関係の町のことがわかり、うまさも味わえる関係を築きたいものです。そんな交流こそ、国に頼るだけでなく地方同士のつくりあげる地方創生となるはずです。前向きに取り組んでいきます。

 ところで、11月11日から16日までハワイに神楽集団「若楽」「ニュースイングジャズオーケストラ」「豊前天狗太鼓」のみなさんら35人をふくむ66人で行ってまいりました。5月に豊前に里帰りし、「おかげさまで」と題して講演いただいたジョージ・アリヨシ元ハワイ州知事への答礼訪問。同行された福岡県人会の能丸会長さんともども「こんな素晴らしい豊前の神楽文化を是非、ハワイで披露して欲しい」との強い要望をお受けしての訪問団派遣でした。市の厳しい財政事情も考慮し、国の事業で経費の2分の1を補助してもらうことが出来、ジャズ、神楽、和太鼓の派遣団員については大きな負担なく訪問が出来ました。

 大きな目的である教育交流の扉もあける方向で動き始めました。ヒロにあるセント・ジョセフ校の関係者が豊前に大きな関心を寄せていただき、早ければ来夏にも訪問団を送りたい意向を受けました。次につながる楽しみな流れが出来そうです。その次は豊前から、となるように頑張ります。

 

市長の部屋 平成27年11月

 先月8日、豊前市に久しぶりに明るいニュースが流れました。約1年前より本市の第三セクターである豊前開発環境エネルギー社と共に取り組んできた大型の企業誘致「新電力のイーレックス社進出検討開始」です。国内最大のバイオマス発電所が豊前市に進出する計画の発表です。循環型社会育成を目指す市として、再生可能エネルギー発電所実現のため出来る限りの協力を惜しまない覚悟です。

 イーレックス社は、東京に本社を置き、現在は高知市で土佐発電所(出力約3万キロワット)を稼働、佐伯市で出力約5万キロワットの発電所を建設中です。九州電力100%子会社である九州みらいエナジー社と共同運営会社をつくり、インドネシア、マレーシアからパーム椰子殻を輸入して、これを主燃料に約7万5千キロワットの発電を計画しています。

 木質燃料を使うわけですから当然、灰が出てきます。この灰については豊前開発環境エネルギー社が海洋環境浄化能力を持つ資材に活用。灰処理の負担が少なくできる計画です。立地場所は九州高圧コンクリート敷地内となる予定です。この4社で事業検討開始の合意書を結んでいます。進出決定に向けて詰めの作業に入り、近く決定が期待されます。

 2年半前の市長就任直後、九州高圧コンクリート社で生産されていたコンクリートパイル部門が熊本工場に移る、という計画 が表面化。それから1年ほどかけて移転が完了。

 何とかしなければ、と多くの人たちに跡地に立地してくれそうな企業紹介をお願いして歩く日々が続きました。この間、いくつかの企業が視察にきましたが、進出決定には至りませんでした。

 その後、イーレックス社の今回の発表となりました。人口減少が歯止めのかからないなか、雇用や税収面での効果を望めます。

 立地場所には隣接して九州電力の石油火力発電所があり、太陽光などからのピーク電力を蓄える世界最大級の蓄電設備が現在建設されています。電気エネルギー供給基地としての歴史を刻んできた豊前市に、石油とバイオマス発電に、蓄電がそろい踏みする近未来図ができます。産業観光も夢見ます。

 もちろん、安定したパーム椰子殻を受け入れる基盤としての宇島港の整備強化など課題もあります。前向きに取り組んでまいります。

※10月号で書きました「人口減少時代に対応した事業の大胆な見直し」は関係機関に理解をしていただくべく作業を進めています。将来に負担を遺さないように決断、実行します。

 

市長の部屋 平成27年10月

「財政運営に赤信号」「経常収支比率95.8%に」

 9月議会初日の3日、監査委員が昨年度の決算審査を報告したなかで「単純に歳入から歳出を差し引いた形式収支、繰り越し財源分を控除した実質収支は黒字だが、財政調整基金1億円を取り崩し、地方債の繰り上げ償還を加減した実質単年度収支は4千6百万円の赤字」「支出の中で、人件費、扶助費、公債費など義務的経費が税・交付税などの経常一般財源に占める経常収支比率は95.8%(将来への投資などに使えるお金はわずか4.2%)で、かなり硬直化が進んでいる」と指摘しました。普通の家庭に置き換えると「貯金を切り崩し、借金返済を一部繰上げしても赤字」「衣食住、医療、教育などの基本的支出、借金返済だけで95.8%。(家族旅行や家の改造などに回すお金は出せない)」と、まったくゆとりのない家計です。この傾向は、平成23年度から続いており、これからも続く危険性があります。

 さらに、今取り組んでいる地方創生のなかで浮かび上がってきたことは、今後20数年間に人口が2万人台を切る方向にあるということです。当然、これまでも人口減対策、健康長寿事業などに取り組んではいますが、減少の歯車を逆回転させることは至難です。

 これでは、財政の基本的心構えである「入るを量り、出(いずる)を制す」を強化しなければなりません。「入る」は人口増、企業誘致、産業育成などの施策。「出」はこれまでも取り組んできた歳出削減、抑制策です。しかし、いずれも十分に結果が出ている状況にはありません。近く、企業誘致については少し明るいニュースを提供できるかもしれませんが、歳出は削りすぎては、地域経済が縮小してさらに不況が加速するかもしれません。

 そこで、監査委員の次の指摘に耳を傾けなければと思います。「本市の上水道、下水道などの公営企業会計には総額3億6千万円という多額の補助金を支出しており、財政を大きく圧迫している」。市役所本体の職員数(218人)や経費は縮減努力を続けてきましたが、公営企業という特別会計やゴミやし尿を処理する一部事務組合の財務には大きな見直しは手つかず状態で す。

 これらの中には、人口が3万人台を維持することを前提に開始され、そのまま今日まで保持されている施設があります。この先の人口予測が「減少傾向」と見えてきたのに、施設は「人口維持」ですから、今後は身の丈に不相応な大きな施設を持ち続けていかねばならないわけです。大きければ、それだけ大きな予算が必要なのです。負担を後世に回すことになります。

 経常収支比率が95.8%という「非常事態」に、こうした施設の今後についても大胆な見直し、改革が求められます。財政状況を示すシグナルが黄色から赤へと変化していく中、市民のみなさんや議会の理解をいただき、勇気をもって切り込む決断が必要となるでしょう。

 

市長の部屋 平成27年9月

「生産、加工、販売そして学びの拠点 水産振興施設が着工」

 宇島漁港の背後地、豊築漁業協同組合本所横に豊前市が同漁協とともに計画してきた水産振興施設が8月1日、着工しました。水揚げされた魚介類の加工、調理、販売の拠点。海の観光の目玉。海洋環境と魚介類の生態などを学べる場など多くの期待が集まります。目の前に広がる豊饒の豊前海。その恵みをどのように活かしていくのか。そして、次につなげるか。今を生きる私たちに突き付けられた大きな課題を解決する方策のひとつとして年度内完成を目指します。

 この施設は、2年前から県の豊前海研究所、同漁協と協議会をつくり、漁協の組合員さんたちの理解を求め、準備してきました。水産資源の減少、魚価の低迷、消費者の魚離れ、担い手の高齢化など漁業、漁家を取り巻く厳しい状況を打開するために取り組んだ施設です。農業に比べて遅れている水産業界では極めて珍しい6次産業化施設でもあります。

 建物は木造2階建て、延べ床面積547平方メートル。総工費約2億5千万円は国などからの財政支援を受け、市の負担はほぼ半額です。木材は市有林から切り出した京築ヒノキを多く使用し、水産だけでなく地元林業のPRにも一役かっています。

 1階に、水揚げされた魚やエビ、カニ、貝類などを生きたまま水槽に入れて、消費者に新鮮そのものを選択購入してもらえます。その場で活きたまま、もしくは漁師さんが魚をさばいて販売する計画で、専用のスペースをとっています。さらに、ステンレスの調理台などが見える調理室を設け、加工グループのみなさんが、市内の直売所、スーパーなどで販売できます。ここでは将来、地元で獲れた魚などを加工して学校給食に提供できるればと、考えています。

 2階は、エレベーターでも結ばれ、漁師食堂「うのしま豊築丸」が入ります。現状の2倍となる70席以上のテーブル。窓席、テラスから遠く豊前海が眺望でき、眼下に宇島の新旧漁港が広がります。夜になれば、ライトに浮かぶ漁船がロマンティックの雰囲気を醸し出してくれそうです。

 この施設の最大のウリは、玄関ホールや食堂で、映像装置により豊前海に生きる魚介類の生態や海洋環境、漁師さんたちが取り組む漁船漁業の実態、地元の漁業史などが学べることです。5分間から10分間にまとめられた映像が、海の生涯学習の場を提供します。もちろん、予約してもらえれば、食育の場をして活用できることになるでしょう。隣に、県の豊前海研究所があるのも学びの場としての強みです。無事故で予定以上に早く開業できることを祈っています。

 

市長の部屋 平成27年8月    

「循環型社会で、ゴミを減量。産出費用で地域を元気に」

 地方創生の時代を迎え、豊前市でもまち・ひと・しごと創生会議を立ち上げ先月2回目の会議をもちました。国が準備する1千700億円の交付金をめぐって知恵を絞りあう地方自治体の姿が浮かび上がります。もちろん、豊前市も市民2千人を対象にしたアンケート調査を実施するなどして、どんな創生プランをもつか11月をめどに決定する予定です。

 お金がないから、国の「交付金」をねらって知恵を出すのもいいのですが、同時に今の行政執行の中で「もっと無駄はないのか」「今を見直して作りだせるお金はないか」研究することも大切です。国が先導する形での創生事業とは別に「自力更生しなければ」と、考えています。

 それでは、どこから取り組むのか。豊前市は周辺の自治体と連携して目的別の執行体制と、チェック機能としての議会を有する一部事務組合という組織を抱えています。そこではゴミやし尿の処理、中学校、消防運営などの仕事をしていますが、かかる経費はそれぞれの組織から「ほぼ求められるままを各市町で負担」が現状です。

 ここにメスを入れて経費を削減する。そして浮かした経費を他の要望活動に回す。こんなことも考えていかねばなりません。例えば、ゴミを処理する豊前市外二町清掃施設組合の場合。豊前市から昨年度約2億5千万円が支出されています。市民のみなさんから預かった貴重な財源です。2割削減で、5千万円が産出できます。

 どうしたらできるのか。いま、市民のみなさんが決められた曜日に各家庭、地域から出し、市が回収しているゴミを減量するのです。ゴミを回収するときにもっと細かく分別することで、ゴミが資源として回収できます。リサイクル、リユースです。

 先進自治体では27品目に分けて、年間のごみの収集量を4,382トンから717トンに減量。埋め立て処分地の寿命を40年延命しました。また、資源ごみを売却した利益の一部を自治会に還元し、自治会の活動に役立てていただいているようです。豊前市では、市民のみなさんが協力していただき、減量・経費削減に結び付けば、市民のみなさんの要望する地域事業に回せたら「協働のまちづくりが実現できる」と考えます。

 国に頼らず、「今を見直して取り組める地方創生事業」こそ、やるか、やらないか、です。市民のみなさんが「立ち上がってくださればできる」事業です。資源、お金は足元に有り、です。豊前市としてこれから、地域のみなさんに相談しながら取り組んでいかなければ、と考えています。

 

市長の部屋 平成27年7月

「観光協会発足で目指す豊前市観光の今後」

 豊前市に今月、観光協会が発足する予定です。市を中心に議会の協力を得ながら、商工会議所など民間の力を併せてのスタートです。事務局をどこに置くか、業務内容などはこの紙面をみなさんが読まれるころには固まっているはずです。

 豊前市は、京都や奈良、富士山、伊勢神宮などのような「一生に一度は行ってみたい」観光地ではなく、北海道や沖縄のような非日常の暮らしを体験できるところでもありません。でも、市内にはたくさんの観光資源が埋まっています。緑深き山々には、国の天然記念物ツクシシャクナゲ群生の犬ヶ岳、修験道の求菩提山、美形の経読岳など。修験の山には茶の木など薬樹、薬草の跡が刻まれ、山岳密教の歴史遺産は求菩提資料館に全国的にも例がないほど遺っています。

 山のふもとには畑の冷泉、求菩提の山水、挾間の乳の観音の霊水などの湧水があり、これらを源流とする多くの川には、アユやヤマメ、ハヤ、カニなども生息しています。山水を受けた棚田の美味な豊前米、里山の山野草を加えて山里の「食の原点」があります。

 求菩提の伝統的な農村風景の希少価値が国から文化的景観選定を受け、緑地や河川のもつ優れた癒しの力が森林セラピー基地として認証され、他にはまれな心身ともに健康を増進できる素敵な魅力ある地域でもあります。

 豊前海に目を向ければ、外海にはない豊かな栄養をもつ内海ならではの深い旨みを持つ、新鮮な魚介類が生息しています。4百種を超す魚介が四季折々の味をもたらしてくれます。この豊かな海の恵みを活かした豊築漁協の水産加工施設が年内オープンを目指して今月にも着工されます。ここを拠点に鮮魚の提供、加工、そして漁師食堂うのしま豊築丸の1次から3次まで集めた6次産業化施設となります。

 ここでは、隣接する県豊前海研究所と連携して魚介の生態、海の環境、地元の漁法、歴史などを、生産現場と所蔵資料、映像などで学べる「海の学校」を構想しています。生涯学習の施設として多くの方々に利用していただけるように少しずつですが映像制作から取り組んでいるところです。

 伝統文化として誇れる、神楽や祇園。市内各地に伝えられている祭事も豊富です。なかには角田地区のどんど焼きのおこもり小屋のように全国的にも珍しい風習もあります。ここでは真冬の寒い期間、地域の各家庭の夕食を小屋に持ち寄り、たき火を囲んで老壮青幼が交流、談笑するなど、このコミニュケーションが地域の連帯と絆を強めています。おこもり小屋は三毛門地区にも広がり、豊前市の新たな魅力となりそうです。

 ジャズや和太鼓、若楽の芸術、芸能、そしてスポーツなど掘ればいくらでも宝物が眠っています。こうした地域の宝、力を「資源として季節ごとに、地域ごとに組み合わせて情報提供する」ことが観光協会の大きな仕事です。「一生に一度」のあこがれの観光地ではないけれど、小さな驚きや、感動、喜びが重なって、負けない観光資源となるはずです。

 それには、地域の受け入れ態勢が必要です。主役の住民のみなさんが外からのお客様を気持ちよく接遇する「おもてなしの力」です。地域で出会ったら、こちらから声をかけたり、笑顔を向けるなど、ちょっとした気配り、気遣いです。

 これまで豊前市への観光客数などのデータは道の駅おこしかけの利用者数、販売金額などが基本でした。そのほとんどは通過客です。これからは宿泊客増を目指さなければなりません。

 今月から、宿泊施設の核である卜仙の郷の運営を、福岡市に拠点をおき東京、湯平温泉、延岡市で店舗展開する鷹勝グループオーナー(豊前市・沓川出身)の会社にゆだねます。このほか、市内の宿泊施設、岩屋地区の農村民泊などを受け入れ施設として宿泊観光を拡充したいと考えています。しかし、宿泊施設の絶対数が不足することは明白だと感じています。そこで、負の資源となっている市内各地に存在する空き家を改修して、地域の身近な宿に利用してはいかがでしょうか。地域の同意さえいただければ、挑戦したい空き家対策事業でもあります。

 空き家利用の宿泊は、安価で長く滞在していただける可能性も秘めています。そのうえ豊前市では健康長寿をめざす口腔ケア事業を進めています。外からのお客様にもこの運動を伝える「健康と観光の町」「長期滞在型観光の地」となりたいものです。

 

市長の部屋 平成27年6月

「有難うございました。ジョージ・アリヨシご夫妻」

 市制施行60周年記念式典などの主事業が10日、盛大に無事に終了できました。これも、市民のみなさまのご協力、ご理解のお蔭です。有難うございました。限られた財政の中、市職員も会場づくりなど頑張ってくれました。おかげさまです。感謝です。

 そして、何より有難かったのは元ハワイ州知事ジョージ・アリヨシさんご夫妻、ご長男のご来訪です。アリヨシさんは「確か、8回目の豊前市訪問」。9、10日と丸2日間豊前市内を回ってくださいました。ご高齢のためお二人とも脚が少し不自由でしたが、出迎えの市民のみなさんに元気づけられたのか、後半は杖を忘れられるほどでした。この間、お二人が語られたエピソードを少し紹介します。

 アリヨシさんは記念講演だけでなく、三毛門小学校など機会あるごとに「おかげさまで」という日本人観を熱く、流暢な日本語で語られました。主に、14歳の時に「将来は大学に行って弁護士になりたい」と打ち明けたところ、お父さんは「分った。いいことだ、私は裸になっても君を支えていく」と決心してくれた。「嬉しくて、絶対に頑張ろうと誓った」と話されました。

 戦後の日本に進駐軍通訳として着任したGHQ本部近くの路上での「7歳の靴磨き少年との出会い」では、少年が戦争で国も家庭もみんな困っているから、(自分にもできる)靴磨きをしていることを知った。ある時、少年にこっそりバターとジャムを塗ったパンをあげたところ、「ありがとう、ありがとう」と言いながら少年は食べずに所持した袋に「なおした」(しまう、でなかったのでアリヨシさんの日本語は九州弁でした。嬉しい)。

 理由を聞くと、3歳になるマリコという妹と分けるとのこと。お腹をすかしながらなお、妹のために振る舞う少年に感動され、「日本は焼け野原だが、必ず近い将来に立ち直ってくる」と信じた、と。自分のためだけでなく、周りへの気遣い、気配りができる日本人の生き方の大切さを、少年の所作を通して強調されました。この話は、アリヨシさんから安倍総理のお父さん、晋太郎元外務大臣、安倍総理に伝わり「靴磨きの少年(シューシャインボーイ)とパン」として有名です。

 なぜ、三毛門小学校を来訪度に訪問するか、という問いに。「お父さんは3年生までしか学校に行けなかった。だけどそこで学んだ知識、生き方を子供の自分たちに話してくれた。恩を忘れない。義理を欠かないなどを教えてくれた。その恩返し」と。「お父さんは(アリヨシが戦争で)出征するとき、しっかりやってくれ。周りに恥をかかせぬように」とも。

 同じ境遇の移民でブラジルの日系人は、戦後、非常に肩身の狭い思いをしており、彼らは日系であることを隠していました。アリヨシさんが彼らに「ルーツが日本人であることを隠すより、堂々と日本人の生き方の素晴らしさを訴えるべき。誇りを持つべき」と語ったところ、涙を浮かべながら元気を取り戻したとのことです。その後、日系人として頑張ったことも披露して下さいました。

「食べ物でのエピソード」

 宇島の漁師食堂で旬のコウイカ定食。コウイカ、サヨリなどの刺身とサヨリ、キス、野菜の天婦羅。アサリ貝の酒蒸し。アカモク。以下は硬いし、大丈夫かな、との心配をよそに「おいしい」を連発しながら、ご夫妻ともほぼ完食。アカモクは納豆 のようにご飯に混ぜたアリヨシさん。奥様はアリヨシさんのタクアンにまで箸を伸ばされ「おいしい」。

 歓迎レセプションでは、テーブルに料理が満載。いつもコース料理を食されているから、と案じていましたが「これは何」と聞きながら、ニコニコ顔。おでん、キヌ貝、ウナギの蒲焼き、黒米のお寿司、もつ鍋、三毛門カボチャのだんご汁など口に「おいしい」。お代わり、追加も。アリヨシさんは「こんな美味しい豊前の食べ物をハワイのみんなにも食べさせたい」と。

 二人は初めての卜仙の郷の温泉。入浴されたままなかなか出てこられないので、心配しましたが「山の中のこんな気持ちのいい温泉はない」と大喜び。初めての求菩提資料館視察や高校生と市民楽団の演奏、若楽と和太鼓のステージを見た今回同行の奥様は「いままで知らなかった豊前の素晴らしさを知り、豊前市がますます好きになりました」と語ってくれました。

 翌日の県議会訪問では、小川知事の水素エンジン公用車に乗っていただき、日本の最先端技術を体験されました。次の日には、東京で国会議員との懇談。そして夜は、天皇皇后両陛下からのお招きで晩さん会にご出席されました。偉大な方で、気さくな、思いやり溢れるご夫妻。ご夫妻にとってもご成婚60周年の思い出のふるさとへの旅だったと思います。

 このご縁を、次世代を担う子供たちにつなげるため、豊前市としてしっかり頑張ります。

 

市長の部屋 平成27年4月

 地方創生のプログラム「まち ひと しごと」が動き出しました。国が考えた施策を地方に補助金を渡して事業を実施するというこれまでの全国均一的「金太郎飴」施策ではなく、地方の知恵を、地方が実行できる正に創生プログラムです。

 実は、国の地方創生という政策が具体化し始めた昨年末、豊前市はいち早く「市職員全員参加で取り組むべきだ」と、仕事納め式で「正月休みを使って、創生事業を考えてほしい」と、呼びかけました。ふだん仕事を通して、市民の1人として「豊前市がこうあったらいいな、こうしてみたらどうだろう」などのアイデア、構想です。1月中旬に課ごとにまとめて提出してもらいました。そんな地元の知恵をこれから施策に仕立て上げていかねばなりません。苦労ですが、楽しみです。

 地元だけでなく、UIJターンと呼ばれる市外からの移住者の力を活かす地域おこし協力隊事業も今回の創生施策に盛り込まれています。豊前市では新年度採用の募集と試験をこのほど終了。新年度に設立計画のある文化協会職員2人と水産振興施設職員1人の3人を採用しました。

 協力隊員は東京、大阪、名古屋の3代都市圏や政令指定都市の住民で将来、豊前市に定住することを目指す人たちです。十分ではありませんが3年間の必要経費、給料を国が負担する仕組み。国では27年度、28年度まであと計3千人増員して継続される見通しです。

 豊前市は、この制度を活用してまだまだ多くの人材を採用したいと考えています。豊前市がこれから取り組みたい教育分野、1次産業、6次産業化、国際化をはじめ、市内に立地していない仕事や事業を起業しようという人材を確保したいと考えています。

 今回応募していただいた中にも豊前市に来ていただけたらという人材もいました。ITの分野で長けた能力を持つ方、デザイン技術の優れた方、大学の講師や職員など。ユニークな人もいました。菜食主義者(ベジタリアン)で、畑で野菜を作りながら山羊を飼って自家製チーズをつくりたい、という夢を持って移住したかった女性など。こんな人たちの力を呼び込んで、豊前市の新しい顔、商品を作れたらいいなあ、と思いました。

 豊前市は、地域おこし協力隊以外にも、仕事が見つかるか、できるかどうか、いきなり移住するのは不安という方を対象にワーキングスティという事業も展開します。研修生を一定期間受け入れてくださる農家、企業などの協力をいただき、お試し移住ができる制度です。協力隊、ワーキングスティの事業にチャレンジしたい方をご存じの方は市総合政策課までご紹介ください。お願いいたします。

 このような、市外からの人材が持てる能力を発揮し、地域に貢献していただくために地元としてうまく受け入れる力も求められます。ご協力をお願いします。

※UIJターンとは・・・Uは故郷に帰る、Iは都市在住者が移転、Jは故郷ではないが故郷に近い豊前市に移り住むという意味です。

 

 

 

 

 

 

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